1998年11月14日 中国新聞ニュースより

海外在住被爆者にも
健康管理手当支給を



米・韓・ブラジルから参加



 海外在住被記者の援護充実を訴える「在外被爆者問題パネルデイスカッション」(日本被団協主催〉が十三日、東京都内の参議院議員会館であった。来日した韓国、米国、ブラジル在住の被爆者らがパネリストとして意見交換した。
 中心テーマは、在外被爆者への手当支給問題。厚生省は被爆者援護法の前身である原爆二法時代の一九七四年、日本国の領域を越えて居住地を移した被爆者には法が適用されない、とする局長通達を出した。現在もこの方針は変わらず、国籍にかかわらず被爆者が出国した段階で被爆者健康手帳は効力を失い、健康管理手当なども支給されない。
 これに対し、弁護士の椎名麻紗枝さんは「国外居住者は手当支給の対象外とする明文規定はない。軍人らへの恩給は海外に送金している」と政府の施策を批判。この問題で今年十月、国と大阪府を相手取り、健康管理手当の支給継続を求めて大阪地裁に提訴した韓国原爆被害者協会の郭貴勲元会長は「日本は本当に法治国家なのか」と述べ、裁判への支援を訴えた。
 在ブラジル原爆被爆者協会の森田隆理事長や米国原爆被爆者協会の友沢光男会長らも「私たちは国策によリ移民した。在外だからと援護を受けられないのは納得できない」などと述べ、会場を訪れた全国約百二十人の被爆者らは支援運動の継続を申し合わせた。

官房長官に支給を要請

 日本被団協と韓国、米国、ブラジルの被爆者団体代表は十三日、野中広務官房長官に、海外在住の被爆者に被爆者援護法に基づく健康管理手当を支給するよう要請した。長官は「検討していく」と答えた。
 日本被団協の伊藤サカエ代表委員や韓国原爆被害者協会の郭貴勲元会長らが首相官邸を訪れ、日本で被爆者健康手帳を取得した在外被爆者が、帰国後も健康管理手当を引き続き受給できるよう求める小渕恵三首相あての要望書を提出した。
 野中官房長官は「皆さんの気持ちはよく分かる」と述べたうえで「被爆者援護法はスタートしたばかり。実現できるかどうか厚生省とも検討していく」と答えた。
 これに先立ち一行から同様の要請を受けた宮下創平厚相は「援護法は属地主義であり、支給は難しい」と答え、援護法の手当は国籍にかかわらず日本国内居住者を対象とし、国外居住者への支給は困難、との認識を示した。


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