被爆者:海外在住理由に健康管理手当打ち切りは不当と提訴へ

(毎日新聞ニュース速報 2001年8月4日より)


長崎市の男性被爆者が「被爆者に支給される健康管理手当が海外への転居を理由に打ち切られたのは不当」と、近く、国と市を相手に処分取り消しと未受給分約30万円の支払いを求めて長崎地裁に提訴する。同手当をめぐっては、帰国した韓国人被爆者が同様の訴訟を起こしている。在外被爆者を支援するグループによると、日本人被爆者の提訴は初めて。

 訴えるのは長崎市若草町、元高校教諭、広瀬方人(まさひと)さん(71)。関係者によると、広瀬さんは15歳で長崎市内で被爆し、57年に被爆者健康手帳を受け、旧被爆者特別措置法(現在の被爆者援護法)による健康管理手当を受けていた。94年8月に中国・ハルビン市の大学に日本語教師として赴任。転出届を市に出して出国したが、95年7月にいったん帰国した際、手当が支給されていないのに気付いた。住民票を長崎市に戻したところ、同9月から支給が再開された。このため94年9月〜95年6月の未受給分約30万円の支払いを求める。

 被爆者援護法では、日本に住む被爆者は国籍にかかわらず公費で医療を受けられ、診断書があれば健康管理手当が適用される。だが旧厚生省は74年7月、日本を離れると適用外になるとの局長通達を出している。

 韓国人被爆者の郭貴勲(カクキフン)さん(77)は98年10月、帰国で打ち切られた同手当の支給を求めて国と大阪府を訴え、今年6月に大阪地裁で勝訴、国などが控訴した。長崎市で被爆した李康寧(イカンニョン)さんも99年5月に長崎地裁に国、長崎市を訴え係争中。厚生労働省は、援護法による医療福祉対策がない在外被爆者の支援策について検討会(座長、森亘・日本医学会会長)を今月1日に発足させた。 

【富田洋一】


[毎日新聞8月4日] ( 2001-08-04-12:55 )


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