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在韓被爆者郭貴勲裁判・第2回口頭弁論報告
              (1999.1.13 16:00〜大阪地裁806号法廷)

第2回口頭弁論(1999.1.13)報告


  原告からは「請求の趣旨の訂正」と、被告に対する求釈明を行った「準備書面(一)」を提出し、被告からは裁判長の前回の求釈明に対する「第一準備書面」が提出された。内容は右ページの通り。
 法廷では、原告弁護団が、求釈明事項を説明した後、被告の「第一準備書面」では「実質的根拠」が明きらかにされたとは言えないと批判。被告の釈明がなければ、郭貴勲さんに対する処分について争えないが、「第一準備書面」に対する反論については、被告の釈明を待たずに行うので、被告はその過程で「実質的根拠」を明きらかにしていくよう求めた。
  ところが、裁判長が「孫振斗判決には日本に現在する者に適用するよう書かれており、行政相談を受ければ在外者は対象外になると思われるが」というような発言をしたため、原告弁護団が「戦傷病者戦没遺家族等援護法」では国外居住者でも年金を受給している、と反論。裁判長がそれについても準備書面で出すよう要請。
 次回までに、原告は被告の「第一準備書面」に対する反論を行い、被告は原告からの求釈明に対して、「検討して返答する」ことになった。



原告 被告
【請求の趣旨の訂正】
 (1)分取り消しの請求
 大阪府知事による、原告が被爆者援護法に定める被爆者健康手帳の交付を持って取得した被爆者たる地位と健康管理手当受給権者たる地位を失権させるとの処分を取り消せ
 (2)慰謝料請求
 大阪府と日本国は連帯して200万円を支払え
【準備書面(一)】
 (1) 「健康管理手当は法律上当然に支給を停止された」とするのは、いかなる法律によるものか  (2)健康管理手当の受給権者たる地位を喪失するのは、手帳取得により生じた被爆者たる地位を喪失した結果なのか
 (3)1974年の通達に言う「居住関係」や「居住地」および「現在地」の意味を明確にせよ
 (4)通達に言う「失権の取扱」と「死亡により失権する」(被爆者援護法では失権を定めたものは死亡の場合のみ)の意味は同一なのか
 (5)原告の出国をどうやって認識し、どういう行政内部の手続きを経て手当支給を打ち切るのか
 (6)「答弁書」に言う「支給の停止」の意味はなにか。 「停止」というなら支給再開もあるのか
 (7)被爆者援護法では、「手帳の返還」が定められているのは「被爆者が死亡したとき」のみだが、原告の手帳を出国と同時に「無効」とした根拠を明きらかにせよ。また、「無効」とされた手帳は返還しなければならないのか
【第一準備書面】
 (1)被爆者援護法の構造
  我が国の領域内に居住も現存もしていない 被爆者に対する各種給付(医療費や手当など)の方法や各種給付を受けるための手続きを定めた規定は、まったく設けられていない。
 (2)立法者意思
  被爆者援護法は、国の戦争責任を肯定するものではないこと及び我が国に居住も現存もしていない者に対して適用されないことが、その制定時の国会審議において明きらかにされた上で可決・成立したものであるので、同法は国外に居住する者に適用されない。
 (3)被爆者援護法の性質
 被爆者援護法は社会保障法の一種として立法され、税負担に依拠しているので、我が国に居住も現存もしていない外国人には、明文の規定がない以上、適用されず、たとえ同法が国家補償的性格を有していたとしても国外居住の外国人に適用する規定がない限り適用できない
 (4)1978年の孫振斗最高裁判決は「原爆医療法」が社会保障立法の性格をも有することを判示した
 (5)1974年の通達は被爆者援護法の解釈を明記したもので、これに基づく手当の打ち切りには合理性があり、「不合理な差別」を禁じた「憲法14条」「国際人権規約規約B規約に違反する行為ではない


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