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郭貴勲「被爆者援護法」裁判
第10回口頭弁論

     (2000年3月15日,大阪地裁806号法廷)

原告 郭貴勲さん

VS.

被告 国

 の対決!

 

●これまでの裁判で被告が主張してきたことのポイントは以下の一文に集約されている。

  被爆者援護法は、日本国内に居住又は現在する者を適用の対象とするのであるから、たとえいったん取得された被爆者援護法上の『被爆者』たる地位といえども、その者が外国に出ることによって同法が適用されなくなるために当該『被爆者』たる地位が失われるのは法の解釈上当然のことであると主張しているのである。(被告の第六準備書面)




▼この被告の主張部分に関して、前回の裁判で、

  @ 原告側が被告に

 「その者」とは何か? 

と聞いたところ



被告は 日本国内に居住又は現在する者 と返答してきた。


 えっ! ということは、日本に住んでいる被爆者が2泊3日の海外旅行をしても、被爆者健康手帳は無効となり、被爆者の手当も打ちきられるということなのか。
 だが、海外旅行する被爆者はいっぱいいるけど、手帳を無効とされて、手当を打ちきられた被爆者は、これまでに一人もいない。
 これは、日本の被爆者行政が法律どおりに運用されていないことを、日本国自らが認めるという
 ことを、意味しているのか?
 それとも、厚生省の被爆者行政によれば、被爆者援護法は、出国により権利が奪われる被爆者と、出国しても権利が奪われない被爆者という、被爆者間の差別を生み出すことを前提とした法律だ
 ということなのか。

「外国に出ることによって法律が適用されなくなる」という被告の主張に裁判官も反応した。

A 裁判長が被告に 「外国に出ること」をどうやって把握するのか? と質問したのである。

 

   被告は,次回の裁判までに答える と返答。



▼そこで今回の第10回裁判で、被告はまったくおかしな返答をしてきた!! 
 被告の出してきた第8準備書面に書かれた返答とは
 


@被爆者援護法では毎年健康診断を行うことが定められており,その案内状を被爆者に郵送するが,案内状が「居住者不明」で返還された場合,外国への出国を確認できる。

A被爆者が各種手当を受けている場合,

・医療特別手当の受給者は,3年ごとに「医療特別手当健康状況届」を提出しなければならない。その届に居住地を記載する欄があるので,居住地が明らかになる。

・健康管理手当の受給者は,3年ないし5年の期間が満了すると,継続して手当を受けるためには再度認定申請しなければならない。その申請書には住所を記載する欄があるので,居住地が明らかになる。

 また,期間満了前に,期間満了と認定申請を促す通知書を郵送しているので、それが「居住者不明」で返還された場合,外国への出国を確認できる。

B短期滞在の被爆者の場合,事前に滞在予定期間を確認して,期間が過ぎても出国等についての連絡がない場合には現在の事実の有無を確認することになっている。



 ええっ! 日本国内で引っ越しても,郵便物は「居住者不明」で返送される!
 居住地が明らかでも,外国に出国することはいくらでもある!
 日本に住んでいる被爆者なら,手当の認定を受けてすぐに外国にいってしまっても,3年間か5年間は手当をもらいつづけることができるということか? 
 短期滞在者だけが不利益を被るのか!
 郭さんももらえる条件にある保健手当(2キロ以内で被爆した者)や,小頭症手当のように,一度認定を受けたら、再審査なしで死ぬまで受給し続けることのできる手当も、被爆者援護法にはあるのだが……。

 
★今回の裁判で、被告の主張が矛盾だらけであることがはっきりとしてきました。
 


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