在韓被爆者渡日治療広島委員会決議

内閣総理大臣 小泉純一郎殿
厚生労働大臣 坂口 力 殿
法務大臣   森山真弓 殿

決 議


 韓国原爆被害者協会の元会長郭貴勲さんが原告となって在外被爆者への援護法適用を訴えていた裁判は、去る六月一日大阪地方裁判所の三浦裁判長が郭貴勲さんの主張を認める歴史的判決を言い渡した。これによって在外被爆者の援護が一歩前進するという光明が見えてきた。しかし政府が控訴を検討しているというマスコミの報道に接し憂慮している。控訴をとりやめ老齢化した在外被爆者の健康と生きる希望を保証する政策をうちだすことを強く要望する。
 韓国に在住する被爆者は、韓国人孫振斗さんが被爆者健康手帳を求めて起こした裁判の判決直後1974年に厚生省衛生局長が出した通達により、日本出国と同時に被爆者としての権利を奪われ援護から締め出された。その結果健康の回復の遅れ、それに起因する経済的困難の循環を長い間強いられてきた。同じ被爆者でありながら、日本の被爆者と対等に取り扱われていないという精神的苦痛がこれに加わった。これは治療の中で日々私たちが実感していることである。広島と長崎でなぜ韓国人が原子爆弾の下にいたのかを振り返るとき、韓国の被爆者にとってこの通達の意味はあまりにも重いものがある。今回の判決は、解釈による運用は日本居住者と現在しかしない者との間に差別を生じ、憲法14条に違反するおそれがある、と断じ援護法の公正な適用を求めている。
 私たち「在韓被爆者渡日治療広島委員会」は、日韓両政府の合意に基づいて始まった韓国人被爆者の渡日治療が打ち切られる前の1984年に民間病院の協力によって発足した。これまで全国の有志のカンパに頼りながら444人(6月5日現在)の渡日治療を受け入れてきたが、2300人と云われる被爆者に限定してもなお5分の1に満たない。まだまだ多<の渡日治療希望者がいるなかで、民間団体の活動にはおのずから制約があり、経済的困難者や症状の重い人は渡日できないという現実がある。このことは韓国のみならず朝鮮民主主義人民共和国、中国、アメリカ、ブラジルなど在外被爆者に共通する問題であり、国の腰を据えた取り組みが待たれている。
 被爆者の老齢化が進むなかで援護を急がねばならない。「国益」のために控訴して在外被爆者の権利を再び奪うことはあまりにも理不尽である。政府は判決を受け入れ早急に援護法の適用に踏み切るとともに道義ある姿勢を示すことを強<要望する。以上決議する。

 2001年6月9日

 在韓被爆者渡日治療広島委員会
(広島市中区大手町1丁目4番1号河村病院内)
 2000年度総会参加者一同



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