控訴断念と402通達の取り消しを求める声明文

控訴断念と402通達の取り消しを求める声明文

内閣総理大臣 小泉純一郎様
厚生労働大臣 坂口力様

法務大臣 森山真弓様
大阪府知事 太田房江様

 2001年6月4日
原告・郭貴勲(クァク・クィフン)
原告訴訟代理人弁護団
韓国の原爆被害者を救援する市民の会


 去る6月1日、大阪地方裁判所(三浦潤裁判長)において、被爆56年間、どこからも何の援護策も受けられず病苦と貧困に苦しんできた在外被爆者にも、一条の希望の光が差しこんでくるような判決が下されました。

 裁判では「被爆者はどこに住んでいてもその苦しみはみな同じ。日本政府は在外被爆者にも被爆者援護法の適用を」と訴えてきました。

 そして、原告とともに、米国原爆被爆者協会の倉本寛司名誉会長、在ブラジル原爆被爆者協会の森田隆会長が、各国の被爆者の厳しい実状と、在外被爆者に対する日本政府の差別的な行政実態を証言し、この裁判が、韓国2300人、朝鮮民主主義人民共和国1000人、アメリカ1000人、ブラジル190人、中国数名等、在外被爆者5000人を代表する裁判であることが、明らかになりました。

 その結果、判決は、「被爆者援護法も社会保障と国家補償の性格を併有する特殊な立法というべきものである。さらに、同法が被爆者が被った特殊の被害にかんがみ被爆者に援護を講じるという人道的目的の立法であることに照らすならば、我が国に居住も現在もしていない者を排除するという解釈を導くことは困難というほかはない。……被爆者援護法は、被爆者が今なお置かれている悲惨な実情に鑑み、人道的見地から被爆者の救済を図ることを目的としたものであって、(在外被爆者排除は)同法の根本的な趣旨目的に相反するものといわざるを得ない。解釈に基づく運用は、日本に居住している者と日本に現在しかしていない者との間に、容易に説明しがたい差別を生じさせることになるから、憲法14条に反するおそれもあり」と、被爆者に対する人道的援護と被爆者の人権尊重を第一に掲げ、日本政府の在外被爆者排除を完膚無きまでに否定したのです。

 裁判勝訴のニュースが報じられるや、わたしたちのもとには、韓国やアメリカやブラジルの被爆者から、喜びの声と、控訴断念を求める声が次々と届いています。

 在外被爆者はみな高齢化し、残された時間はあとわずかしかありません。しかも、原爆後障害には、いまだ特効薬がありません。

 在外被爆者に被爆者援護法を適用するためには、新たな法律を作る必要はありません。判決が「憲法14条に反する恐れあり」と断じた402号通達を取り消すだけでよいのです。

 わたしたちは、一刻も早く、控訴を断念し、402号通達を取り消し、原爆後障害に苦しむ高齢の在外被爆者に、被爆者援護法を適用することを、強力に求めます。


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