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郭貴勲「被爆者援護法」裁判第4回口頭弁論
        1999.5.7(金)16:00〜 大阪地裁806号法廷にて


広島三菱裁判で不当判決!郭貴勲裁判でも被告が引用、次回に大反論を


  さる3月25日、広島地方裁判所において「三菱広島元徴用工被爆者裁判」の判決が下されました。
 三菱広島裁判では、日本政府と三菱重工と菱重(三菱清算会社)を相手に、強制連行おび強制労働、原爆被爆後の在韓被爆者の放置に対する賠償請求と、未払い賃金の払い戻しが、求められていました。これに対し、広島地裁は、


(1)強制連行および強制労働に対する日本国責任について
 「国家無責任の法理により法的には問うことができない」とし、事実認定は一切行わないまま、原告訴えを棄却しました。
(2)強制連行、強制労働および未払い賃金に対する三菱の責任について
 「すべて時効と除斥期間を過ぎているため請求権利は消滅」として、事実認定は一切行 わないまま、原告の訴えを棄却しました。


(3)在韓被爆者の受けた原爆被害と戦争被害について
  「先大戦においは、当時日本国籍を有しいた者のほとんどすべてが様々な被害を被っており、その被害が深刻な事例も少なくない。先の大戦中、とくに原告らが徴用を受けた戦争末期は国の存亡にかかわる非常事態であり、日本国籍を有する者の多くが自身や近親者の生命、身体、財産を危機に晒し、……国民に対する補償要否およびあり方には一義的に決定できない」と、「朝鮮人=日本人」とする朝鮮植民地支配を当然のごとく容認する判断を示しました。

(4)ところが、在韓被爆者補償問題となると
 「朝鮮人=日本人」なる見解を一転させ、「韓国人=外国人」としました。そして、これを根拠に、被爆者援護法の在韓被爆者への適用について、「国民の税によって賄われる国の給付を外国居住の外国人が権利として請求することができるという法制度は、通常では考え難い」 とし、原告訴えを斥けました。

(5)さらに、在韓被爆者を戦後放置してきたことについては
 「在韓被爆者対策については遅きに失した感は否定できないものの……現在までには一定の施策が講じられおり……」としました。日本政府が被爆後半世紀以上在韓被爆者を放置しつづけた結果、原爆被害が増大し、かつ日本人被爆者との間に著しい不平等が生じていることに は一切言及せず、「人道的医療支援金40億円」の支払いで事足れりとしたのでした。

 以上のように、三菱広島判決は、日本の朝鮮植民地支配を一切反省しない歴史認識のもとに 下された、極めて反動的な不当判決でした。
 この判決の中でとりわけ上記(3) (4)の部分は、郭貴勲さんの裁判に大きく影響しきます。事実、今回提出された被告側の第三準備書面では、三菱広島判決(3) (4) を全 面的に引用しきました。これに対する原告側の反論は、次回の口頭弁論で行います!  

 今回の裁判では 

郭貴勲さんが前回出した反論への国の反論

原告側・準備書面(三)
(郭貴勲さんが第3回に国に対して反論した書面)
被告側・第三準備書面
(国が第4回に郭貴勲さんの反論に対して出した書面)
(1)被告の言う「わが国に居住も現在もしていない外国人には、明文上の規定がない以上、被爆者援護法が適用される根拠はない」 に対する反論。
 1. 「わが国に居住も現在もしていない者には適用しない」との規定がない以上、適用 を否定できない。
  2.被告が、「国家補償法でも、わが国に居住も現在もしていない外国人には適用がな い」例として挙げた「国家賠償法」および 「戦傷病者戦没者遺族等援護法」には、外国人への適用を制限する明文規定があるから適用されないのであって、被爆者援護法には外国人への適用を制限する明文規定がない以 上、適用を否定できない。

(2)いったん交付を受けた被爆者健康手帳が、居住も現在もしていない被爆者の場合で、失権されたり、失権されなかったりした 事例を挙げる。
 被爆者援護法に「居住も現在もしていない 被爆者への不適用」を規定した条文がないために、日本国の在外被爆者行政が極めて恣意 的で違法に行われていることを実証。

(3)被告が前回準備書面で、原告は日本に来るたびに、被爆者健康手帳を取得しいるのであれば、なんらの不利益も被っておらず、裁判する必要がないのではないかと、裁判の意義を歪曲するような求釈明をしたので、それに対し、原告が帰国に際して被爆者健康手帳を無効とされるために被る具体的不利益を、被爆者援護法により被爆者として享 受し得る援護策に基づいて、列挙する。

(4)被告が原告に行った不法行為の中身と、それによって原告が受けた精神的苦痛について、原告が日本の朝鮮植民地支配以降今日まで受け続けてきた、韓国人故の差別を基軸に述べる。
 (1)被爆者援護法は国家補償法ではない。  
 1. 三菱広島判決の上記(3)と同様の主張で、「(戦争被害に対しては、)国民が等しく受忍しなければならない性質のものである」から、被爆者援護法も戦争損害に対す る補償のための法律ではない。
 2.孫振斗最高裁判決も、原爆医療法は基本的に社会保障法としての性格を有している と判示している。

 (2)戦傷病者戦没者遺族等援護法の海外在 住者への適用について
 国籍要件を定め、属人主義を採用し、国外居住者の裁定請求を制限する規定がなく、同法の要件を満たす者には一律に支給する立法政策を採用し、適用対象者が決定されたためで、被爆者援護法とは立法趣旨と法規定内容が異なる。

 (3)原爆2法の沖縄在住被爆者への適用はなかった。琉球政府の負担と権限により、 原爆2法と同種の援護がなされたものであ る。

 (4)402号通達の「居住関係」とは「居住地」おび「現在地」を包含した用語で、孫振斗最高裁判決も、日本に居住または現在 する被爆者に原爆医療法の適用を認めた判決であり、402号通達と最高裁判決は矛盾し ない。

 (5)広島三菱判決も居住も現在もしない者への被爆者援護法の適用はないと判示している。


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