李康寧裁判、勝訴判決関連ニュース一覧

<中国新聞12月26日>
国に103万円支払い命令 長崎在外被爆者訴訟
 

国に103万円支払い命令 長崎在外被爆者訴訟

 被爆者援護法に基づく健康管理手当が帰国を理由に打ち切られたのは不当として、韓国釜山市在住の元徴用工、李康寧さん(74)が国と長崎市を相手に、打ち切り処分の取り消しや、不支給分の手当と損害賠償の計約四百万円の支払いを求めた訴訟の判決が二十六日、長崎地裁であった。

 川久保政徳裁判長は、原告の健康管理手当受給資格を認め、国に不支給分の手当、百三万円の支払い命じた。健康管理手当の打ち切り処分の取り消しの訴えについては却下した。

 川久保裁判長は、判決理由で「原告は帰国して日本に居住していなくても、被爆者援護法にいう被爆者の地位を失わず、被爆者健康手帳は無効にならない」と指摘した。打ち切り処分取り消し請求については、「行政処分にあたらず、訴えは不適法」などとした。

 訴えによると、李さんは徴用先の長崎市内で被爆。韓国に帰国後、糖尿病などの治療のため一九九四年七月に来日し、被爆者健康手帳を取得した。「運動器機能障害」と認定され三年間の手当支給も決まったが、同年十月に帰国すると支給を打ち切られた。

 原告側は、援護法に海外居住の被爆者を適用除外する規定は存在しないとし、長崎市長が旧厚生省の局長通達に従い手当を打ち切ったのは違法と主張。法の下の平等を定めた憲法や人道的な面から被爆者救済を図る援護法の目的にも反するとして、不支給分の手当約百三万円の支払いなどを求めた。

 これに対し国側は、援護法は社会保障法であり、日本社会の構成員でない海外居住者には適用されないと反論。「法的救済が認められていない一般の戦争被害者との均衡を考慮すべきだ」と主張していた。

 在外被爆者への手当不支給をめぐっては六月、韓国人郭貴勲さん (77)の裁判で、大阪地裁判決が在外被爆者の手当受給資格を認めたが、国と大阪府が控訴。

 国は「手帳は国内のみ有効」などと法令に盛り込んだ上で、渡航費の補助など在外被爆者への新たな援護策を来年度から実施する方針を明らかにしている。

【写真説明】判決を前に開かれた集会に参加した原告の李康寧さん(左端)と支援者たち=26日午後、長崎地裁


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