朝日新聞ニュース   2001.12.23 


 在外被爆者に支援を シンポで必要性指摘国の対応には批判

在外被爆者に支援を シンポで必要性指摘 国の対応には批判


 在外被爆者問題などについて考えるシンポジウム「東アジアの被爆と平和」が22日、広島市中区の平和記念資料館(原爆資料館)地下メモリアルホールで約百人が参加して開かれた。

 広島大大学院国際協力研究科の主催。広島の支援者らから、高齢化した在外被爆者への早期支援の必要性が指摘され、厚生労働省が発表した在外被爆者支援策には批判の声が出た。

 韓国・翰林大の池明観教授が「アジアの平和と日韓関係」と題して基調講演。「市民の力、良識の市民連帯でナショナリズムを超えられる。政治を超えて文化の交流を続けることが、我々に課された課題だ」と話した。

 パネリストとして、在外被爆者の支援者や学者ら10人が次々に発言。民間団体「在韓被爆者渡日治療広島委員会」の金信煥幹事は「民間が募金を募りながら支援するのには大変な困難がある」と話し、日本政府の責任による在外被爆者の治療が必要だと主張した。

 日本国外に住む被爆者には旧厚生省の通達が壁となって被爆者援護法が適用されず、健康管理手当などが支給されない。日本に来て被爆者健康手帳を取得しても、出国した途端に失効する。

 厚生労働省は、02年度予算の財務省原案に約5億円の支援費を盛り込む一方で、政令の改正で「手帳は国内でのみ有効」と明記する方針を明らかにしている。

 援護法に詳しい田村和之・広島大教授は「政令に書き込むとは驚くべき対応。大阪地裁で敗訴し、上級審の判断をあおいでいる最中の政令改正は、司法判断への挑戦といえる」と国の対応を批判した。

 また、法理論的には在外被爆者に国内被爆者とまったく同じように法律を適用するには難しい問題もあり、今後の検討課題であるとした。

 在日本朝鮮人被爆者連絡協議会の李実根会長は「戦後56年間まったく支援の手がつけられず、見捨てられているのが北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)在住の被爆者」だとし、一刻もはやい支援の必要性を訴えた。


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