中国新聞ニュース   2001.12.19 


 在外被爆者 失望隠せず

在外被爆者 失望隠せず '01/12/19

 渡日旅費の負担などを通じ、すべての在外被爆者の被爆者手帳取得を目指す今
回の援護策。一方で被爆者援護法の適用は見送られ、在外被爆者たちは失望を隠
さなかった。

 厚生労働省が援護策を協議するきっかけとなった在外被爆者訴訟の原告で韓国
人被爆者の郭貴勲さん(77)は「だまされたような気持ちだ」と憤る。「(厚労省
の)検討会は国内外の援護策の差が『不合理』だと認めたはず。渡日治療だけで
は不十分だ」と、あくまで援護法の適用による健康管理手当などの支給を求めた。

 「渡日が年老いた身にはどんなに大変か」と訴えるのは、検討会で意見陳述し
た在ブラジル原爆被爆者協会会長の森田隆さん(77)。「国に奨励されて移民した
のに、同じ援護を受けられないのはどうしても承服できない。三年間で手帳を取
らせるというが、高齢化した被爆者は待てはしない」と指摘した。

 ■自国での救援訴え

 「まだ日本と同じ援護を受けられないのか」。在外被爆者への援護策を坂口力
厚生労働相が打ち出した十八日、韓国原爆被害者協会ソウル支部女性部長の具貞
先さん(76)は渡日治療で入院している広島県西部の病院で、一層の支援を訴えた。

 被爆者健康手帳を持って日本にいれば適用される被爆者援護法。「韓国に帰る
と手帳は引き出しの中よ」。渡日治療は旅費はかかるが、日本での医療費は無料。
具さんの場合、韓国で普通に医療機関にかかり、二カ月入院すると、日本円で約
十五万円かかる、という。

 「どこの国に住んでいても被爆者は被爆者。苦しいのはみんな同じはずなのに…」。
今の制度は不平等との思いを募らせる。

 二十歳のとき、広島市東区東蟹屋の自宅で子どもたち三人と被爆。軽傷ですみ、
二カ月後には家族でソウルに帰ったが、頭髪が抜けるなど後遺症に悩まされた。
二十年ほど前に胃腸を悪くして渡日治療を受けるようになり、今回は十月下旬に
入院した。

 「ほかに欲はないんです。日本にいる被爆者と同じように、一人でも多くの被
爆者が自分の住んでいる国で手当をもらい、治療を受けられるようにしてほしい
のです」。無念の思いを抱えたまま二十三日、帰国する。

【写真説明】「どこの国に住んでいても同じ被爆者なのに…」。病室で一層の在
外被爆者支援を訴える具さん


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