中国新聞ニュース   2001.12.11 


 在外被爆者 支援案を並列提言

 「在外被爆者に関する検討会」(座長・森亘日本医学会会長)の第五回会合が十日開かれ、在外被爆者の渡日治療や医療支援の充実、金銭給付に向けた基金の創設などを並列的に盛り込んだ報告書をまとめた。細部を調整し、近く坂口力厚生労働相に提出する。半面、被爆者援護法の適用や改正については、判断を回避。年内にも出される坂口厚労相の「政治決断」に結論を委ねた。

 報告書では、「人道上の見地から、居住地によって援護に差があるのは不合理」と強調。援護法の適用については「医療体制や水準が違う中での適用は、現状では困難。特別な規定が必要」とするにとどまった。

 その上で、具体的な援護策として、渡日治療ののための渡航費支援▽日本滞在中の生活支援や帰国後の対応▽原爆医療に携わる人材の育成―を列挙。健康管理手当などの金銭給付については、健康診断なしで支給するのは不適切とし「国外では健康状態の確認が困難」とする意見と、「基金を創設し、居住国の実情や本人の経済状況に応じて給付すべき」との意見を併記した。

 被爆者健康手帳の発行については、在外被爆者の掘り起こしとともに、国と県や市、民間団体の連携や役割分担の必要性を指摘した。

 検討会に出席した坂口厚労相は「在外被爆者が高齢化する中、二年も三年もかけた議論はできない。法律的には厳しいものがあるが、『被爆者はどこにいても被爆者』との立場を忘れず、結論を出したい」と話した。

 検討会は今年六月、在韓被爆者に被爆者援護法の適用を認めた大阪地裁判決を受け、控訴と同時に坂口厚労相が設けた。

 ■「新たな第一歩」 秋葉市長

 「在外被爆者に関する検討会」の報告書について、検討会で支援策の必要性を二度にわたり訴えた広島市の秋葉忠利市長は「委員間で相違があった意見をあえて集約せず、併記にとどめたことに、この問題の難しさがある」との認識を示した上で、「何らかの施策を講じるべきである、との共通認識に立ち、国に対し適切かつ早急な施策を求めるもの(内容)であり、在外被爆者の支援に向けた新たな第一歩になると期待している」とのコメントを発表した。

 ■広島の団体「具体策を」

 在外被爆者の具体的な支援策が、坂口力厚労相の判断にゆだねられることになったことで、被爆地広島の被爆者団体や支援団体のメンバーたちは物足りなさを感じながら「一刻も早く具体的支援策を決めてほしい」と要望していた。

 「在外被爆者は五十数年見捨てられ続け、やっとクローズアップされたのだから、もっと具体的な計画を盛り込んでほしかった」。在日本韓国民団広島県地方本部・韓国人原爆被害者対策特別委員会の姜文煕委員長(82)はこう残念がり、「高齢化が進む在外被爆者に希望を与えてほしい」と、早期支援を求める。

 「言葉だけ検討を繰り返し、うやむやにしようとしているのでは」と不信感を抱くのは在日本朝鮮人被爆者連絡協議会の李実根会長(72)。「基金という考え方も示されているが、国家責任を回避する卑劣なやり方」と不満を述べ、被爆者援護法に基づく支援を訴える。

 一方、韓国の原爆被害者を救援する市民の会の豊永恵三郎広島支部長(65)は「一歩前進」と評価。「健康管理手当の支給はすぐにできる。基金ですべての在外被爆者に支援して」と期待する。

 同県被団協の藤川一人理事長(84)は「基金をつくればいいということではなく、政府が本気になり、在外被爆者を人間扱いする政治をしてもらいたい」と、政府に具体策を求める運動を強める考えだ。

 ■長崎市長「評価する」

 「在外被爆者に関する検討会」の報告書について、検討会で支援策の必要性を二度にわたり訴えた広島市の秋葉忠利市長は「委員間で相違があった意見をあえて集約せず、併記にとどめたことに、この問題の難しさがある」との認識を示した上で、「何らかの施策を講じるべきである、との共通認識に立ち、国に対し適切かつ早急な施策を求めるもの(内容)であり、在外被爆者の支援に向けた新たな第一歩になると期待している」とのコメントを発表した。


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