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  第4回「在外被爆者に関する検討会」記録

   11月8日(木)  厚生労働省省議室

(市民の会の「検討会」参観者より情報提供)

在外被爆者に関する検討会 2001年11月8日 15:00-17:00

厚生労働省17階 21会議室



フリートーキング

論点の整理

(事務局より)
第2回,第3回での意見,要望を網羅的に列挙したもの、論点ごとに分断して整理した

   資料に基づいて説明。

在外公館の活用について
 在外選挙については,日本国民の権利に関する事務として実施しているが,外国人への行政事務を実施するのは,困難である。

(森座長)
個人的な感想

なぜ,いまできないのか

 広島地裁,大阪地裁で判断が分かれた点

(厚生労働省の立場から)
  法理論上
   属地主義の考え方
  規制的な行政と給付的な行政は区別されるのでは
     給付の継続要件,調査,命令についての実効性担保の問題が残る

  社会保障の論点
    社会保険(契約),身分関係については,居住地を問わない
    社会扶助,全額税負担 社会構成員でない外国人には,給付されない
  立法時の意思
    孫振斗判決の読み方

  実務上
   海外適用を予定した規定がない
   制度運用の実効性確保の懸念

  法改正について
   戦後補償の観点が改正するのは,政府の立場では難しい

   金銭給付のみを認めるという考える考え方については,医療と手当の一体性からすると,困難では




「1の論点について」

(兼子委員)
 まとまった意見
 被爆者援護法が国の責任とすることについて,立法経緯について,必ずしも定かではない。
 在外被爆者援護の検討をするというときには,孫最高裁判決,国家補償てき配慮が制度の根底にある。
 基本懇では,広い意味での国家補償
 この2つを後退させるべきではない。
 援護法の根底にある。
 国家補償は,行政法学では,違法な行為に対する国家賠償を含んでいた。いわゆる戦争責任を認めることになると考えられやすいが,適法な行為について特別な犠牲が発生したときに埋め合わせをする損失補償がある。
 被爆者については,損失補償の意味合いで,国家補償と言われていたのが正しい。
 憲法29条3項について,土地を収用されたとき,特別の犠牲について埋め合わせをすべき
 シベリヤ抑留の判決は,この場合に適切ではない。
 被爆者援護については,人身損失補償である,予防接種がこれに似ている。
 これについて,最高裁の判決は未決である。
 憲法29条3項もサブで,類推的に,憲法13条の幸福追求権につながるような問題がメイン
 戦時下の被爆,違法ではないにしても,国家行為に基づく,人身損失国家補償というべきものではないか
 在外であっても,日本の国内で被爆したのは事実であるから,平等に補償されるべき
 憲法29条3項については,最高裁は,法律を介さずに,適用を認めたが,人身損失国家補償について,法律がいるのではないか
 現行法で適用があるかは,裁判で係争中,これにエネルギーをさくべきではない。
 法律改正を行うということで対処すべきである。

(小寺委員)
 小寺委員からの資料を配布する
 在外被爆者の問題は戦時下の問題である

 サンフランシスコ平和条約による戦後補償の取り扱い
 
 国の責任を問う裁判についての判決
 1 請求権放棄を根拠とする考え方
   最高裁昭和44年
   請求権放棄に対する補償は,憲法29条3項の保障外
   原審広島高裁昭和41年
   実質的な財産上の損失は発生しない
   日本国政府が,外交保護権の放棄にすぎないというのに符合(最高裁はこれとは,やや異なる)

 2 結果責任を根拠とする考え方
   原爆裁判判決
 
 3 国際法を直接の根拠とする考え方
   オーストラリアでは,自国民捕虜補償原則を認めるが,最高裁はこれを国際法になっていると認定せず。


 この問題への対処
  人道的観点から考えるべきでは

 請求権の放棄という方向で行くと,国民しか対象にならない。

 基本懇が2を採用したのは,妥当であるが,限界がある。

 そこで,人道的観点から,戦争被害を見直し,何らかの補償を行うことが,国際的な流れになっているので,これによるべきではないかと考えている。これは,立法的な解決が必要になる。

 日本の侵略戦争を行ったことを前提とすると,賠償という問題になる。
 賠償とすると,相手国に対して請求すべきことになる。
 賠償とすると,外国人に対するのと自国民への取り扱いを変える必要がある。
 
 日本にいた韓国人については,請求権協定がある。だから,プラスアルファとして考える。
 北朝鮮については,条約がない。今後考えて行くべき問題である。


(堀委員)
 現行の制度について

 最高裁の考え方
  立法不作為を拒否するスタンスを取っている

 社会保障では,
  一般戦災者とのバランスを取る必要がある
  基本的には,社会連帯の考え方がある

 海外の人については,その国の責任である
 ただし,
  例外,社会保険の送金
      労災

 現物給付か現金給付か
  現物は日本国内でないとできない だから,居住要件が当然にある
  現金給付は国内でなくともできる。児童手当などは,居住要件が法律に規定されている。

(森座長)
いずれも,在外被爆者を救済すべきでないという意見ではないようですね。

(土山委員)
 論点ごとに論じるのは,やや分断されるような感じを受ける

 厚生労働大臣の方から,救済の方向を示されている
  われわれは,救済する方向で知恵を絞るべきである。
  援護法は,国内国外で平等に適用するべきである。

 基本懇の最初の答申を尊重すべきである。

 国家補償と個人補償について
  日本とドイツの比較を指摘されている
  現地の人は,ドイツはよくやっているが,日本はだめ。
  なぜか,
  サ条約では,賠償の仕方,国家補償がほとんど
  ドイツは,個人補償をよくしている。

 基金という考え方に対して
  個人へはまわらない,何とか,個人への給付を考えるべき

(森座長)
  大臣の要請はそのとおり,ただ,検討した結果,補償しないという結論も出す自由はある。しかし,これまでのところでは,何もしなくてよいという考えの人はいないよう。

(兼子委員)
 小寺さんの人道的観点からというのは,最高裁も言っている。
 制度の根底に,国家補償があり,人道的観点と合わせて一本というように考えてもよいのでは。
 堀さんの,一般戦災者との比較という論点を持ち込むのは正しくない。
 現物給付を海外で行うのは,難しいとはいえても,海外に出ても,手帳の効力を失効させるのではなけ れば,その国ごとに考えていくことが可能ではないか。

(堀委員)
 一般戦災者との比較について

(森座長)
 損失,なくなった方についての補償は別の次元の問題か

(兼子委員)
 人身損失
 特別の犠牲という観点から,特別の犠牲
 しかし,死亡した人より,存命の方の医療の必要が多い。

(伊藤委員)
 実際に立法措置を取るとき,どのような構想か

(兼子委員)
 手帳は,国外出たときでも効力を有するという条文を設ければよいのでは。
 細目の詰めは,事務局の任せればよい。
 そのようにしても,もともとの規定に,国家補償的な観点があったということになれば,国会で,あまり問題にならないのでは。

(小寺委員)
 国家補償という理念を持ち出すことが,自爆になってしまう。
 そこで,人道的観点から現行の制度と同じものでなくてもよい。

(岸委員)
 被爆者はどこにいても被爆者というのはもっとも国家補償,戦争被害に対する補償という議論をすると,先に進まなくなってしまう。
 戦争に対する認識論を語ると泥沼に入ってしまう。
 そうでない観点からの議論が必要でないか。

(森座長)
論点2について
具体的に講じるべき施策について

(岸委員)
 法律が予定しているのは,まず,医療の現物給付をする。その次に,金銭給付。
 医療の給付は,社会保険とリンクしている。
 ストレートに適用するのは無理があるのではないか。
 別の施策を考えたい。

(土山委員)
 日本に来て,手帳を取った人が,健康管理手当を継続することはできないか
 健康状態のチェックについては,現地で,実態を把握するようなことはできないか
 残留孤児のケースでは,そのようなことを実施しているのではないか

(堀委員)
 兼子委員に対する質問
 手帳さえ出せば,海外でも医療ができるというがどうか。

(事務局)
 健康管理手当,健康状態がどうかと言う点に報告してもらうことになっている。
 診断を海外の医療機関にゆだねて,適切な判断ができるかという問題がある

(兼子委員)
 別立法で考えるべきではない。
 国家補償には必ずしもこだわらない考えになってきた。
 援護法は,医療のみでない,健康管理手当は,在外でも給付可能ではないか。
 医療費の負担というようなことで対応可能では。
 手帳の国外で効力を有することを確認すれば,後は,個々の国ごとに手当をすればよい
のでは。

 小寺さんに質問
 どういうふうにできるか,国際法ではどうなるのか。

(小寺委員)
 外国の同意を得て,給付は日本が行うということも可能ではないか。
 国内法を適用する,これについて,外国の同意を得ればよく,条約を締結を結ぶことまでは必要ではないのではないか。

(土山委員)
 アメリカの収容者への補償については,どこに住んでいても実行されたこれが,多少継続的にと考えれば

(伊藤委員)
 医療と手当は分けて,考えるべきではないか
 医療のレベルが異なる
 放射線医療の見地から,被爆者と関連するのかどうかの判定は可能かという問題がある
 人道的支援として,医療の知識の普及が必要。

 広島,長崎に来てもらって検診を行うことが必要ではないか。
 この点について,経済的考慮が必要ではないか。
 精神的な不安をとってあげることが必要。

(兼子委員)
 渡日治療にたいして,在外で手帳が取れるような手段は取れないのか。
 原爆医療は日本でないとだめというのなら,日本に来れる人には来てもらったらよいが,大使館領事部でできないのか。

(事務局)
 外務省のことはあまりわからない。
 作業量を詰めないと責任ある回答はできない。

(土山委員)
 外務省がジャイカを使っていることを使えないか

(事務局)
 韓国については,日本から医師を派遣,韓国から医師を日本に招致
 これは,現在も行われている
 行政的な認定がどうか問題なので,厚生労働省としては,ジャイカに任せることができるかは,やや疑問。


「論点3」

(伊藤委員)
 現時点では,日本に来てもらうことが必要では,
 なかなか来れないというのなら,支援が必要,財政的にも
 広島のとき,証人探し,3ヶ月から6ヶ月の期間が必要,民間がしている,これに対する支援も必要である。

(岸委員)
 民間団体についてもレベルがある
 当局に尋ねたい
 民間団体に任せられるものがあるか

(事務局)
 資格制度については,委託しているケース,
 登録なども
 ただし,給付の認定については,当局の権限
 そのための準備については,民間にサポートしてもらうことは可能かも

(堀委員)
 財政的にみて,自治体が海外に住んでいる人の便宜をはかるのはどうか
 全面的に,国がとか,自治体かというのは違うのでは

(岸委員)
 海外に行って,日本の医師が医療が給付するのは,難しい問題もある
 残留孤児への対応を考えてみた
 現地の民間団体に肩代わりをしてもらうことはできないか

(土山委員)
 健康管理手当の継続給付についても,裁判になっているわけだから,この点も救済する必要があるのでは

(森座長)
 都道府県と国が一緒になって,民間団体も一緒になって,していくのは,難しい問題もあるのでしょうか

(兼子委員)
 今の議論,在外の民間団体に委託することができれば,ありうるのではないか。

(森座長)
 国際的なネットワークを持っている団体もあるのでしょうか

(小寺委員)
 医療活動として,民間団体としてありうるのかと思うが,給付はちょっとむずかしいのではないか。

(森座長)
 意見書の目次の案を作ったので,これを事務局から配布してもらう

(堀委員)
 在外被爆者に関する主な論点というのは,援護についてというように限定して考えた方がよいのではないか


次回 12月10日月13:30−16:30 厚生労働省9階省議室
次回までに起草委員会を開いて,すこし詰めたいと思う