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  第1回「在外被爆者に関する検討会」記録

   8月1日(木)  厚生労働省省議室

(厚生労働省ホームページより)


   
01/08/01 第1回在外被爆者に関する検討会議事録



第1回在外被爆者に関する検討会(平成13年8月1日)

厚生労働省健康局総務課

出席者:伊藤 千賀子 委員   岸 洋人 委員   小寺 彰 委員
    土山 秀夫 委員    堀 勝洋 委員  ○ 森  亘 委員
   ○:座長

議事次第

1、開会挨拶
2、議題
 (1)検討会開催の経緯について
 (2)在外被爆者の現状等について
 (3)今後の議論の進め方について
3、その他

第1回在外被爆者に関する検討会議事録
               (開会・13時00分)



 事務局
 それでは定刻になりましたので第1回在外被爆者に関する検討会を開催いたします。
 まず、傍聴者の方は入室の際にお渡しした注意事項をよくお守りくださいますよう、お願い申し上げます。
 坂口厚生労働大臣は他の用務で遅れてまいります。参り次第、ご挨拶を申し上げることといたしております。
 それでは第1回の検討会ということでございますので、本検討会にご参加いただきました委員の皆様をご紹介させていただきます。お名前を順次読み上げさせていただきますので、その際には一言ずつ、ご挨拶いただければ幸いでございます。
 財団法人広島原爆障害者対策協議会健康管理・増進センター所長の伊藤千賀子先生でございます。

 伊藤委員
 伊藤でございます。よろしくお願いいたします。被爆者の健康管理に昭和40年から携わっております。在外にも北米、南米、北朝鮮等に伺って被爆者の方々の実態を少し垣間見てまいりました。よろしくお願いいたします。

 事務局
 東京都立大学名誉教授の兼子仁先生は、本日、ご欠席でございます。
 読売新聞社解説部長の岸洋人先生でございます。

 岸委員
 岸でございます。よろしくお願いいたします。非常にデリケートな問題で様々な論点からの議論が必要かと思っております。ひとつ、勉強しながら議論を重ねていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 事務局
 東京大学教授の小寺彰先生でございます。

 小寺委員
 小寺でございます。よろしくお願いいたします。専門は国際法でございます。その観点から何か貢献できればと思っております。よろしくお願いいたします。

 事務局
 長崎大学名誉教授の土山秀夫先生でございます。

 土山委員
 土山でございます。私も専攻は森座長と同じく病理学でございます。私自身、被爆者健康手帳を所有しております。どうぞよろしくお願いいたします。

 事務局
 上智大学教授の堀勝洋先生でございます。

 堀委員
 堀でございます。よろしくお願いします。社会保障法を専攻しております。その観点から何か貢献できればと思っています。よろしくお願いいたします。

 事務局
 日本医学会会長の森亘先生でございます。なお、森先生にはこの検討会の座長をお願いしております。

 森座長
 森でございます。ただいま、ご紹介ありましたようにたまたま日本医学会の会長を引き受けております。専門は病理学で病気の理屈をいろいろと考える学問でございます。
この度、座長ということでどのぐらいお役に立つかわかりませんが、どうか、皆様方、ご指導いただきますようお願いいたします。

 事務局
 本検討会のメンバーは以上の7名の先生方でございます。
 次に事務局につきましては健康局総務課で担当させていただきます。よろしくお願いいたします。
 なお、本検討会は会議の公開という形でお願いしたいと存じます。
 それではまず、お手元の資料の確認を予めしておきたいと思います。お手元の資料の中に資料一覧があると思いますので、それをご覧いただきたいと思います。
 資料一覧の中に資料1から資料10−5まで、参考資料として1から4までございます。中身が入っていますかどうか、恐縮ですけれどもご確認いただきたいと思います。もし、資料で抜けているものがございましたら事務局までお申しつけください。 それでは以後の進行は森座長にお願い申し上げたいと思います。それでは森座長、よろしくお願いいたします。

 森座長
 さて、命じられるままに座長などお引き受けいたしましたが、皆様方のお助けなくしては全うし得ない立場でございますので、重ねて、どうぞよろしくお願いいたします。では進行という程度の座長をやらせていただきます。
 さっそくでございますが、この会議は完全な公開ということになっていると事務局から説明されました。実際には、私の知っております範囲で、公開の程度は事務局で決めるものではなしに、委員会の委員たちによって決めるものだと理解いたしております。
今日、こうして傍聴の方々もお見えになるような段取りを事務局でつけてくれておりますが、委員の方々にはそれぞれ予めご了承を得ていることと存じますので、これでよろしゅうございますね。再度、一応、念を押させていただいて。それではこのような形の公開で進めることにいたします。
 次に、殊に私にとっては、この検討会の使命と申しますか、趣旨と申しますか、それを一番知りたい。おおよそのことは伺ってはおりますが、改めてきちんと、今日までの経緯とか、この検討会に与えられた使命、あるいは発足した趣旨、そういったことを、まず、事務局からご説明願いたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。委員の方々。
 それではそのようなことで、まず、事務局にお願いしましょうか。

 青柳総務課長
 健康局の総務課長の青柳でございます。私の方からこの検討会の開催の経緯、趣旨につきましてご説明をさせていただきます。
 お手元に配らせていただきました資料2、在外被爆者に関する検討会の開催要綱がございます。その1に趣旨が簡単に整理されておりますが、これを少し詳しく説明をさせていただきたいと存じます。
 現在、先生方、ご存じのように原子爆弾被爆者の方々に対しましては「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」、私ども、省略して被爆者援護法というふうに申しておりますが、この法律に基づきます各種の施策が講じられております。しかしながら、この法律は、現在、国内に適用するということで運用がされておりまして、海外に居住しておられる被爆者の方々につきましてはこの法律に基づく措置は講じられておりません。
 この点を争点といたします訴訟が実は提起をされておりまして、去る6月1日に大阪地裁から申し渡されました判決におきましては、のちほど詳しい内容をご説明させていただきますが、こうした海外に居住しておられる被爆者の方々に被爆者援護法が適用されるべきではないだろうかという趣旨の判決が申し渡されたわけでございますが、私どもといたしまして地裁で申し渡された判決につきまして、健康管理手当の趣旨でありますとか、あるいは被爆者援護法が制定されたときの経緯といったようなものを様々考慮いたしました結果、最終的には上級審であります大阪高裁で改めてご判断を仰ぎたいということで判断をさせていただいたところでございます。
 しかしながら、顧みて考えまするに、この被爆者援護法の前身の法律であります、例えば昭和32年の原爆医療法、この制定時以来、言わば日本国内にこの法の適用が限定されるということは、私ども関係者にしてみればある意味では自明の理として理解をされておったことから、その後、被爆者についての特別措置法が制定された際、あるいは平成6年に被爆者援護法が制定されました際にも、これを巡って明確な議論なり、明確な検討が行われたという形が必ずしも明確に残っておりません。
 平成6年の被爆者援護法の制定時におきましては、国会におきまして法案の修正という形で一定のやりとりがございまして、それは最終的には国内に限定して適用するという考え方を私どもも国会の場で申し述べたわけでございますが、必ずしも十分な議論がなされたというふうには受け取れないのではないかというご意見も一部にございます。
 しかるに一方、これまでも在外の被爆者の方々につきましてはそれぞれの国の国情に応じまして法律による措置とは別に健康保持等のための措置を様々に講じてきたところでございます。
 したがいまして、今回の判決を言わばひとつの契機といたしまして、訴訟の問題をいかに考えるかということとは、一応、切り離しまして、改めて在外被爆者の方々にこれまでどのような措置、施策を講じてきたか。そして、今後、新たにどのような方策を講じることが可能かということを幅広くご検討いただくということが必要であろうというふうに私どもの厚生労働大臣の坂口の方から私どもが指示を受けまして、皆様方に言わば厚生労働大臣が参集をさせていただくという形でお集まりいただいたのがこの検討会
ということでございます。
 本検討会のメンバーは、さきほど自己紹介をいただきましたように被爆者援護に関する学識経験者の方のみならず、各分野の法律の専門家の先生方、あるいは幅広く社会保障に関わりのある先生方、様々な分野の方々にお集まりをいただいております。
 それぞれの先生方の言わば専門的なお立場から、さきほど申し上げましたことで繰り返しになりますが、必ずしも一定の例えば裁判の問題をどうすると、あるいは被爆者援護法を直接にどうするということにとらわれず、幅広く在外被爆者の問題についてご意見を賜ることができれば大変に幸いと存じます。
 以上の趣旨につきましては後ほど厚生労働大臣、参りました際に、大臣の口から直接、また、先生方にお願いをすることになろうかとは存じますが、私の方からは以上、ご説明をさせていただきました。

 森座長
 はい。どうもありがとうございました。これは大変奥の深い問題のようであります。議論を始めてからでも勿論結構ですが、さしあたって今、ご質問なり、ご意見はございませんでしょうか。
 私など全くの素人で、自分の領域の専門知識が役に立つとも思えませんが、「海外に居住する」という言葉を使われましたね。海外に居住するということは本人の国籍とは全く無関係のことなのですか。

 青柳総務課長
 国籍の問題につきましては、この被爆者援護法は外国籍である方でお
られても日本に居住するか乃至は日本に現在をする方はすべて被爆者援護法の施策の対象になるということでございます。この現在するという言葉の意味は、例えば本国から日本に立ち寄られて、そこで一定の用事を済まされるというようなケースを典型的にはお考えいただければといいと思います。
 逆に、外国に居住されている方は日本国籍を例えば有したまま外国におられた場合であっても、この被爆者援護法の対象にはならないというふうに運用させていただいております。

 森座長
 はい。ありがとうございました。このような点も法律の方々には自明のことかと思いますが、私にとってはかなり基本的なことですからご質問を申し上げて。他に。はい。どうぞ。

 土山委員
 今のお話をもうちょっと現実的なものに組み換えて質問いたしますと、従来までの規定で在外被爆者に対する援護の問題が必ずしも明確でなかったということに対して、この規定の中にちょうど国内被爆者に対するのと同じように、例えば健康管理手当なども海外の在外の人にも適用するというふうにするのか、あるいはこれを除外事項として適用しないというふうにはっきり否定をするように審議をするのか、その点はいかがなのでしょうか。

 森座長
 その辺りはこれからの問題かもしれません。何かお答えになりますか。

 青柳総務課長
 今、土山先生の方からお訊ねがありましたのは、最終的に、一定の検討をした場合にどういうことになるのかというお訊ねだろうと思います。
 私どもはこの問題の検討が直接に法律の改正を目的とするものとして検討をお願いしているというふうには考えておりません。したがいまして、ここでご検討いただきました結果、そういった在外被爆者の方々についての取り扱いが一定の場合に、例えば現行の法律を改正をして整理をするという結論が導かれる場合もあり得るかとは存じますが、その結論を導くためにこの検討をお願いしているのではないというふうに理解をしております。

 森座長 ですから、私たちにはかなり幅の広い自由が与えられていると、そう理解してよろしいのでしょうね。

 土山委員
 おおよそわかりました。

 森座長
 他にいかがでしょうか。よろしゅうございますか。さしあたっては。
 では、先に進みましょうか。今、ご説明の中で、私の印象に一番強く残ったのは、「判決」をひとつの契機として、それがきっかけではあるかもしれないけれども、現在私どもに与えられている使命は決して対策とか、目先の手当てではなしに、もう少し幅広く、奥深くこういう問題を論議せよ、ということですね。そのような理解でよろしゅうございますか。はい。
 それでは基本的な考え、役所の考え方、あるいはこの検討会が持っている使命について、一応のことは伺ったといたします。それにしても再び、私のような人間は現状がどうなのか。そういう方々が果たしてどのぐらいおられるのか、あるいは全般的に対応はどういうことになっているのか、ほとんど存じません。ですから、いわゆる在外被爆者と呼んでよろしいのでしょうか、そういう方々の現状とか、その他について、さらに事務局から説明していただけませんか。

 青柳総務課長
 それではお手元の資料に沿ってご説明をさせていただきたいと存じます。 まず、お手元の資料の3をご覧いただきたいと思います。この資料の3では被爆者援護行政につきましてのこれまでの経緯を、特に在外被爆者の取り扱いとの関係で、言わば簡単な年表化をしたものでございます。このいわゆる年表を片側に置きながら4−1以下の資料についてのご説明をさせていただきたいと思います。
 まず、資料の3にもございますように、昭和20年の8月6日、9日にそれぞれ広島、長崎に原爆が投下されたわけでございますが、この原爆に基づきます被爆者の方々に対しての健康保持等のための法律的な措置としては昭和32年4月1日に施行されました「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律」、簡単に私ども、原爆医療法と申し上げておりますが、これが原爆行政のスタートということになっておりまして、この原爆医療法におきましては被爆者健康手帳の発行、あるいは健康診断の実施、医療費の給付というような施策が講じられたわけでございます。
 さらに昭和43年になりまして「原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律」、私ども、省略して特別措置法と申し上げておりますが、この特別措置法が施行されまして特別手当、あるいは健康管理手当等の経済的な給付、これがこの特別措置法で行われるようになりました。
 以後、平成6年に被爆者援護法という現行法の形で一本化がされるまでの間、原爆についてはこの二法が並行する形で施行されていました。いわゆる原爆二法と総称されますものがこの原爆医療法と特別措置法でございます。
 この法律制度の仕組みを原爆二法、現行の被爆者援護法併せて全体として眺めますために資料の4−2をお開きをいただきたいと存じます。
 これが被爆者援護法による健康保持、増進、福祉のための措置の概要でございます。長崎、広島で被爆した方々、被爆の形態は多様でございます。爆心地に近いところで直接被爆をされた方々、あるいはお母さんの胎内で被爆をされた方々、あるいは肉親の安否を確かめるために被爆直後に広島市、長崎市に入市をされて被爆をされた方々、あるいは爆心地から逃げてこられた方々を様々に救護する形で被爆をされた方々がいらっしゃいます。こうした被爆をされた方々についてはそれぞれ居住地の都道府県、広島市、長崎市の場合はこの法律上は都道府県と同じ取扱いとなっておりますが、居住地の都道府県に申請をしていただきまして被爆者健康手帳というものを発行を受けます。この被爆者健康手帳を持っておられる方を法律上の被爆者というふうに私どもは扱っておりますので、被爆者であるというのは被爆をした事実に留まらず、この被爆者健康手帳の発行を受けるということをもって法律上の被爆者という扱いをさせていただいております。
 この被爆者健康手帳は被爆を受けたという事実を証明するための書類であるのみならず、その各種の給付を受けるための受給証等の機能も持つことになります。例えば健康診断を受けるときの言わば健康診断の受給証の機能を、事実上、この手帳は果たすことになりますし、また、医療の給付を受ける場合の受給証の効果を持つことになります。あるいは各種の手当を、経済的手当の支給を受ける場合にはその申請の際にこの手帳を要件として求めることになっております。
 また、原爆老人ホームをはじめとする各種の福祉サービスの利用におきましても、この被爆者健康手帳がやはり受給証の働きをしているという形になっておりまして、この被爆者健康手帳を発行することによりまして、その居住地の都道府県知事はどのぐらいの数の被爆者の方が自分の都道府県に居住をされているのかということが把握できますし、また、それが受給証として申請時に利用されることによりまして、各種の事業給付を行うための数を把握することができ、そのための費用を支弁をすることができるという仕組みになっております。
 これらのサービスについて必要なお金は国が交付金、あるいは補助金という形でほとんどの場合は全額、一部例外がございますけれども、各費用を支弁する自治体に交付し、自治体が具体的なサービスのための費用を支弁する。このような流れになっております。
 一部、医療費につきましては当然のことながら医療費が現物給付という形で提供されることから、基本的には国が診療報酬支払基金等を通じて支給をするという仕組みになっております。
 続きまして資料の4−3でございますが、ただいま、申し上げました被爆者健康手帳の交付についての事務をより詳細に示した資料でございます。
 新規申請の場合には被爆をした方が居住地の都道府県知事に交付を申請して交付台帳に必要事項を記載し手帳の交付を受けるということでございますし、居住地を移転する場合には被爆者の方が新しく移転した先の居住地の都道府県知事に居住地の変更届を出すということをやっていただくことによりまして、新居住地の都道府県知事から言わば住所を補正した手帳を返してもらうということになるわけでございますが、新居住地の都道府県知事は前に住んでいた都道府県知事に被爆者の方からそういう変更届けがあったことを通知をすることによりまして、前に住んでいた旧居住地の都道府県知事がその方は自分の所管の地域には住んでいないということを事後的に把握ができるというような仕組みになっておるわけでございます。
 続きまして資料の3のところに戻っていただきますと、昭和49年7月22日ということで「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律等の施行について」、公衆衛生局長(当時)の厚生省の担当部局でございますが、その通知の発出について述べてございます。
 この49年のこの時点におきましては、実はそれまで被爆者ということで、今、一括りにしております概念が2種類の概念に分かれておりまして、それを一本化をし、手帳等についても一本化をしたというような大きな改正がこの時点で行われておりまして、そういった改正に伴いましていくつか事務的な手直し、あるいは制度的な手直しが行われたのがこの49年でございます。
 特にこの在外被爆者との関係では、資料の4−4を併せてご覧いただきたいと存じますけれども、改正前には実は住所が変わったときには被爆者の方は今まで住んでおられた旧居住地の都道府県知事に届け出をしていただくということを必要としておりました。全く新たに言わば新居住地の都道府県知事から認定の新規の申請をして手帳等を交付を受けると、このような手続きをしておりましたが、このような手続きをした場合には形式的とは言え、一旦、給付が途切れるということも法律の条文上はございますし、住所が変更したということだけであるならば事後的に届けをすることによって旧居住地の都道府県知事がその情報を知ることができるのではないだろうかというようなご意見があったことから、「改正後」と書いてあります、右側の現在の仕組みでございますが、被爆者の方は住居地が変わった場合に新居住地の都道府県知事にのみ変更届を出していただければ足りるという形に手続を改めております。
 この際に実はここで国外におられる方との関係が問題になってくるわけでございますが、従来、改正前であれば言ってみれば居住地が変わるのと同様に、国外に行くということになってそこに居住地を持たなくなるということから、当然に言わば手帳の発行その他の給付の権利が失権をするということで扱っておったわけでございまして、それが49年の改正によりまして国内において届け出を省略をしたことに伴いまして、国外の取り扱いのところが不明確になるという現象が生じたわけでございます。
 そのため、資料の3の49年7月22日にところに括弧書きで書かさせていただきましたが、国外居住の方については、言わば従来どおり失権の取り扱いになるということをこの49年通知で、言わば入念的に規定をしております。
 この通知は、資料の4−4の2頁目に抜粋をつけさせていただいております。これは特別手当についての記述でございますけれども、健康管理手当、その他についても同様でございます。なお書きとして最後に書いておりますように、「日本国内に居住関係を有する被爆者に対して適用されるものであるので、日本国の領域を越えて居住地を移した被爆者には同法の適用がないものと解されるものであり、従ってこの場合にも特別手当は失権の取扱いとなる」というような表現でこういった49年の改正に伴います手続きの簡素化、これとの関係で国外の方についてどのような取り扱いになるかということの、入念的規定を設けているという性格のものでございます。
 しかるに、これが法律を越権して、行政の通知により失権を規定したものではないだろうかということが大阪地裁における判決においても争点のひとつとなっております。
 続きまして資料の3に戻らせていただきますが、昭和52年の3月に第1回の北米被爆者の健診が実施されております。この点につきましては、のちほど在外の方々に法律的な対応以外にどのような対応しているかということをまとめてご説明をさせていただきますので、そこで詳細を触れさせていただきます。
 続きまして昭和53年3月30日の項でございますが、孫振斗訴訟最高裁判決と書かさせていただきました。この裁判につきましては日本国内に居住をしておられる、あるいは現在をしておられる外国人の方々に原爆二法が適用されているということはこの当時も変わらない扱いでございましたが、この裁判の対象となった原告の方は不法在留という形で日本国内に入管法等の規定によれば適法に在留できない、居住できない方が原爆二法の申請をされたときにどのような扱いをするかということが最高裁まで争われた問題でございます。
 この点、資料の5に53年最高裁判例の抜粋をつけさせていただきました。また、本文につきましては参考資料の2の方に全文がついてございますので、のちほどご参照いただければと存じます。
 この昭和53年の最高裁判例、結論の部分だけ資料の5でご覧をいただきたいと存じますが、結論といたしましてはこの原爆二法につきましては「実質的に国家補償的配慮が制度の根底にある」ということをひとつの根拠といたしまして、不法に居住された、在留されている方であっても、「国内に現在する者である限りは、その現在する理由等のいかんを問うことなく、広く原爆二法の適用を認めて救済をはかることが、同法のもつ国家補償の趣旨にも適合するものというべきある」ということをお示しをいただいたものでございます。
 なお、資料の5の方にミスプリントがございますのでご訂正をいただきたいと思いますが、この最高裁判決の日にちが53年の3月7日となっております。資料の3の方には正しい日にちが書いておりまして3月30日になっておりますので、大変恐縮ではございますが、3月7日を3月30日にお改めをいただければと存じます。失礼をいたしました。
 このような最高裁判決が出ましたことを受けまして、では、その国家補償の意味というのはどのように解し、それをどのように原爆二法の運用に反映させていけばいいのかということが次に私どもの課題になりまして、それが昭和55年12月11日付の「原子爆弾被爆者対策の基本理念及び基本的在り方について」という被爆者対策基本問題懇談会の報告書に結実をしております。
 資料の6にこの基本問題懇談会の報告の概要をつけさせていただいております。また、この基本問題懇談会の全文は参考資料の3の方につけさせていただいておりますのでご参照いただきたいと存じます。
 この基本問題懇談会は当時の茅誠司先生、あるいは田中二郎先生はじめとする各界の先生方に参集をいただきまして、この被爆者問題についての基本的な考え方をご検討いただいた基本懇でございます。
 この基本懇のこの問題に対しての結論ということでございますけれども、国家補償という言葉の意味合いということに関して言えば、これが例えば国が責任を起こしたことの補償をすると、賠償するという意味や、あるいはサンフランシスコ条約によりまして日本国がアメリカに対して戦争に伴う様々な損害賠償権を国として放棄をしたということをもって、国がその代わりをすべきであるといったような場合の国家補償という意味を解するべきではないと。原子爆弾の被害というものが他の戦争被害と比較した場合に、放射能による非常に重篤な健康障害を引き起こすという点に特殊性を求めるべきであり、その意味において他の戦争被害とは一線を画すべき「特別の犠牲」であると。
 したがって、そういう「特別の犠牲」に対して広い意味における国家補償の見地に立つ施策が必要だろうと。しかし、その広い意味における国家補償の見地に立って対策を講ずるといっても、これはあくまでも放射線による健康被害について原因行為の違法性の有無にかかわりなく、言わば結果責任として「相当の補償」を行うという趣旨に解するべきではないだろうかということです。
 また、その補償対策についても他の戦争犠牲者に対する対策に比し、著しい不均衡が生ずるようなものであっては国民的合意は得られないであろうというふうにこの問題を総括をしていただいております。
 したがいまして、この昭和55年以降の私どもの施策の基本的考え方はこの基本懇のご整理をいただきました性格論に基づいて、その後、仕事を進めさせていただいているという経緯がございます。
 再び、資料の3に戻っていただきまして2頁でございます。昭和56年のところに韓国政府の実施する「原爆被害者救済計画」への協力の一環として在韓被爆者渡日治療を開始という記述がございます。のちほど韓国との関係では詳しい説明をさせていただきますが、日本と韓国との関係で被爆者について政府間で正式に行われました施策ということでは、この56年の渡日治療開始が最初のものということでございます。
 引き続きまして昭和60年10月のところをお読みいただきたいと思いますが、第1回の在南米被爆者健診実施ということでございまして、さきほど昭和52年のところで北米の被爆者の方々、在外被爆者の方々への健診を開始したわけでございますが、南米については8年程遅れまして、この60年から開始をさせていただいております。
 続きまして平成2年の5月の項でございます。廬韓国大統領、当時の韓国大統領が訪日をする際に、当時の海部首相より在韓被爆者に対する医療支援ということで40億円の拠出を表明されたという項がございます。
 のちほど詳しく韓国との関係でご説明をさせていただきますが、いずれにいたしましても日本と韓国の関係はさきほどの56年の項、この平成2年の項をご覧いただいてもおわかりのように両国の言わば外交的なルートに基づいて様々な施策を実施してきたという点が他の在外の被爆者の方々に対する施策と若干経緯の異なるものであるということを、この項ではご理解をいただければと思います。
 平成6年12月16日の項は、さきほど申し上げましたが現行の被爆者援護法、「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」の制定でございます。平成7年の7月1日から施行がされております。従来の原爆二法を一本化して総合的な被爆者対策を実施するための法律に改めたということでございまして、この法律につきましては参考資料の1のところにこの法律と施行令、施行規則、全文掲載させていただいております。
 特に参考資料の1の法律のところ、1頁だけ恐縮でございますがお開きをいただきますと、この法律には各1条以下の条文が入る前に前文という形でこの法律を制定した趣旨、その他について、あるいは立法者の考え方というものが述べておるわけでございます。
 この前文の中に特にご注意をいただきたいと思いますのは、最初のところはご覧いただいてもおわかりのように原爆が投下されて以来の経緯でございます。中段のところに書いておりますのは原爆二法を作りまして、医療の給付、医療の手当、その他の措置を講じてきたということと併せて「核兵器の究極的廃絶と世界の恒久平和の確立」という施策、これが言わば背景にあるということの説明をさせていただきました。
 3番目のパラグラフのところでは、被爆50年というときを契機といたしまして、「原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊の被害であることにかんがみ」、これがさきほどの基本懇の考え方を言わば受け継いでいる部分というふうにご理解をいただけようかと存じます。
 「高齢化の進行している被爆者に対する保健、医療及び福祉にわたる総合的な援護対策」、従来の二法を一本化したというのはそういう意味で総合的な対策を講じるためであるということがここで明らかになっているかと存じます。
 最後に「国として原子爆弾による死没者の尊い犠牲を銘記するため」というような形がございますが、「国として」という言葉、要するに、その2行ぐらい前のところで「国の責任において」という言葉が明らかに書いておりますように、これが要するに従来の原爆二法を引き継ぐ形で、すなわち国が言わば責任を持ち、様々な給付の主体としてこの法律を施行していくと、実施をしていくのだということを明らかに書いたものでございまして、この「国の責任において」という言葉が、言わば53年の孫振斗の最高裁判決及び55年の基本懇においてご議論いただきました国家補償的性格ということの言わば法律上の表現としての意味内容を表しているというふうに私どもは理解をしております。
 続きまして資料の7−1と7−2について簡単にご説明をさせていただきます。
 ただいま、申し上げました被爆者援護法を制定する際の経緯ということで、ぜひ、ご留意いただきたい点をご説明させていただきます。ただいま、申し上げましたように被爆者援護法の制定の際には、実は「国家補償」という文言を法律上に盛り込むかどうかということを巡って若干の意見の相違があり、与野党間でご協議、ご審議があった点でございます。
 特に資料の7−1にございますように、一部で言わば外国に居住する被爆者に対しても被爆者援護法の措置が行われるようにするために、例えば「国家補償に基づく被爆者年金という形に現行の手当を改正すれば外国に居住する被爆者にも手当が支給できるのではないだろうか」というお訊ねがあったことに対しまして、当時の保健医療局長、政府委員の方から「この法律は外国の居住する方には支給することは考えていない」と、
「適用することはできないということでやっております」ということを説明をさせていただいております。 したがいまして、公式の場で在外被爆者の方々への手当の支給の議論がなされておりますのは、私の承知しておる限りではこの場面だけではないかと存じます。被爆者援護法の制定時にということで考えればです。
 それを巡る最終的な採決の結果が7−2にございますので、これはご参照いただければ存じます。
 資料の3に戻っていただきまして恐縮でございますが、あと3点、触れさせていただきます。
 平成11年3月25日、在外被爆者に関する広島地裁判決ということで、後ほど詳しくご説明をいたしますが、「原爆二法は外国に居住している者については、その適用を予定していない」という判旨がここでは示されております。
 平成13年3月、今年の3月でございますが、北朝鮮へ初めて外務省と厚生労働省、今日、ご出席いただいております伊藤先生を始めとする医師団が実態調査ということで北朝鮮に行っていただきまして、初めての調査をさせていただきました。
 平成13年の6月1日、冒頭、経緯のところで申し上げましたが、大阪地裁の判決で在外被爆者について「被爆者援護法は、単なる社会保障給付ではなく、「国家補償的性格」を有することから、国外に居住する者に対して支給しない旨の明確な規定がなければ、これらの者にも健康管理手当等を支給すべき」との判旨が示されております。
 以上が主な経緯でございますが、資料の8以降、関係の部分について若干のご説明を補足させていただきます。
 資料の8は主な社会保障の給付制度における在外の方への取り扱いについての一覧比較表でございます。一番上には被爆者援護法の整理がございます。これはさきほどご説明したとおりでございます。
 その他、いくつかの制度においてこの問題がどう法律上、規定されておるか、あるいは運用されておるかということを申し上げますと、まず、特別児童扶養手当につきましては、日本国内に住所を有しない父母又は児童に対しては支給しないという法律上の規定がございまして、この規定に基づきまして国内に住所を有しなくなった方については、この支給要件に該当しなくなることから手当が支給されなくなるという扱いをさせていただいております。
 また、特別障害者手当につきましては、都道府県等の管理に属する福祉事務所の所管区域内に住所を有する特別障害者に対して支給するという法律上の文言になっておりますので、国内に住所を有しなくなることによりましてどの福祉事務所の所管区域内にも住所を有しなくなるということから、この要件に該当しなくなり手当が支給されなくなるという扱いをしております。
 また、児童手当につきましては日本国内に住所を有するときに支給するという明文の規定になっておりまして、日本国内に住所を有しなくなった方は支給要件に該当しなくなるということから手当が支給されなくなるという扱いになっております。
 また、戦傷病者戦没者遺族等援護法による障害年金、これはそこにもございますが、戦中に軍に徴用されていたという、言わば雇用関係が生じていたという関係に基づきまして国が国家補償の形で国外居住者を含めて給付をするという扱い、条文上は明確にはございませんが、そういう扱いになっております。むしろ条文上は日本国籍を失ったときに権利が消滅すると。すなわち日本国籍を持っている方であれば海外に住んでいても対象にはなるが、逆に日本国内に住んでいても日本国籍を失った方には支給されないと、こういう扱いになっておるわけでございます。
 資料の9は大阪地裁、広島地裁の判決の概要でございまして、上に大阪地裁、下に広島地裁が整理されてございます。大阪地裁、広島地裁について裁判を起こされている方々の提起の仕方、あるいはその方々の置かれている状況等について違いはございますが、今回、この在外被爆者との関係に焦点を絞って問題を整理いたしますと、大阪地裁においてはさきほども申し上げましたように、「被爆者援護法は単なる社会保障給付ではなく「国家補償的性格」を有することから、国外に居住する者に対して支給しない旨の明確な失権規定がない限り、国外に居住地を移したとしても健康管理手当等を継続支給すべき」という結論でございますし、一方、広島地裁の判決の方は「外国人が税金による国の給付を請求することができるという法制度は通常では考え難く、法的に明確な根拠が必要であるが、原爆二法にはそのような規定は存在しない」。現在の被爆者援護法にもございません。「原爆二法は、外国に居住している者については、その適用を予定していないと認めるのが相当」との結論でございました。
 続きまして資料の10−1からでございますが、さきほど後ろ送りにさせていただきました、それでは在外被爆者の方々の現状というものをどういうふうに把握しておるかということに関する資料でございます。
 まず、10−1で一覧表をつけさせていただいております。韓国におきましてはのちほどご説明いたしますが、韓国の政府が被爆者について一定の制度的な対応をしておる関係から、政府の登録者が正確に把握をされておりまして、これが平成12年12月現在で2,204 人となっております。
 また、北朝鮮につきましては今年の3月にお伺いをいたしましたときに北朝鮮側から正式に伝えられた方々が被爆者全員で1,353 人おられたけれども、現在、生存されている方は928 名であるということでございました。
 北米、カナダにつきましては、北米については注のところでも紹介をさせていただきましたが、現地の団体等からの聞き取り以上に正確に把握する方法がございませんが、平成11年現在で約1,000 名、カナダの方20数名の方々がおられると聞いております。
 南米につきましても同様の事情でございますが、ブラジルの153 人を筆頭に合計で180名ぐらいの方がおられるであろうというふうに把握しておるところでございます。
 しからば、これらの方々にどのような施策を行っているかということでございますが、まず、韓国については10−2の方に多少細かく説明をさせていただいております。
 さきほどご紹介しました昭和56年の渡日治療でございますが、これは韓国の政府と日本の政府でそれぞれの担当局長同士が締結をいたしました渡日治療に関する合意書に基づいて実施をされたものでございます。昭和56年の12月から61年の11月までの5年間実施をいたしまして、55年のテストケース10名を含む総勢349 人の方々に行ったものでございます。具体的内容は旅費については韓国政府に負担をしていただきまして、日本に来た後のこの方々については被爆者手帳を交付し、医療の給付を行い、また、対象にな
る方は健康管理手当等を支給するということでありまして、被爆者援護法の枠組みの中に載せるという形で対応させていただいたものでございます。
 最終的に61年で終了しておりますのは、3にも少し述べておりますように、韓国政府の理解としては本当に治療の必要な方々はだいたい5年間で治療が終わったと。また、この渡日治療と並行して医療者の方々の技術協力もやっておりますので、必要な治療体制が韓国内で可能になったということから61年を限りとして、この渡日治療は政府間の事業としてはストップをしておる、終わったと、終了しておるということでございます。
 その後の2と3はこれは外務省の方で施策をやられたものですから、私ども、又聞きということでの紹介になりまして大変恐縮でございますが、まず、平成元年度、2年度におきましては外務省から大韓赤十字社に委託をする形で医療支援費を支払いまして、これを大韓赤十字社が実際に治療を行った場合に韓国内の医療機関に支払うという形で実施をされたと伺っております。
 また、3番にございます拠出金につきましては、さきほどもご紹介をさせていただきましたが、平成2年の5月において廬泰愚大統領が日本にいらっしゃるときに、当時の海部首相から日韓の非常に特別な関係に鑑みて人道的観点からの支援をするということで40億円の基金を拠出するということでございまして、具体的には平成3年度に17億円、平成4年度に23億円をお出しする形て、これを大韓赤十字社が基金を設置をいたしまして必要な医療費等の支給に当てるということで運用していただいておりますが、現状を伺いましたところ、およそ2,204 名の方が対象となっておられるわけですが、拠出金はその後、韓国政府の方が支援をされたお金も含めて117 億4,115 万ウォン残額があるということでございます。これはレート換算等で多少の幅があろうかと思いますが、日本円にすると10数億ぐらいの残金ということになろうかと承知をしております。 続きまして10−3、北朝鮮被爆者に対する対応でございます。10−3ではさきほど申し上げましたように今年の3月、外務省、厚生労働省、医療専門家の方々で総勢6名の調査団が実態調査に行っていただいたということでございまして、あちらの保健省を始め、関係の研究所や病院等についてもご視察をいただいたと伺っております。
 被爆者等についてはさきほど申し上げたとおりの人数でございまして、結論的に見て医療機器や設備、医薬品等の状況が十分なものでなくて、入院している被爆者の病室も暖房がないというような環境にあったことを承っております。これにつきましての具体的な最終的公式の報告書は、現在、外務省で作成中と伺っておりますので、私どもの方では以上のご説明に留めさせていただきたいと思います。
 10−4、在北米・南米被爆者に対する対応でございます。北米の被爆者の方々に対しては、さきほど申し上げましたが昭和52年以降、隔年で広島県の医師会、あるいは放射線影響研究所、広島県・市、私どもの方からドクターをアメリカに派遣し、在外の被爆者の健康診断を実施をしております。健診内容は2にあるようなものでございまして、累積の健診人員はそこに4,683 名とありますが、例えば13年度の受診者数は399 名ということになっております。
 続きまして2頁目が南米の方の巡回医師団の派遣事業ということでございまして、昭和60年から実施をしております。健診内容は個人表、あるいは問診表による健康相談が中心でございまして、健診人員は累計880 名、平成12年度の受診者数は80名ということでございまして、これは北米と南米については、今年、北米の方に健診に行きまして、昨年、南米に行っておりますので、そういう1年交代に北米と南米に健診団が行っておるということでございます。
 最後に資料の10−5でございます。日本に短期滞在して出国した在外被爆者についての統計資料を載せさせていただいております。実はさきほど資料の10−1のところでご説明をさせていただきましたが、韓国のように政府が正式に対象者を把握しているような国を除きましては正確な意味での在外被爆者を把握する方法は制度的にもございません。 唯一、私ども、知り得る手法といたしまして平成8年度以降、制度の取り扱い運用の範囲の中で短期に日本に滞在をして被爆者援護法の適用を受ける方々、手帳の交付を受ける方々につきましては、特にいつ頃まで滞在をされるのか、滞在後はどちらの方にお戻りになるのかということを届けていただくというやり方を取っております。
したがいまして、この資料の10−5はそういう形で被爆者健康手帳の交付を受けるために届け出をされた方の数ということでございます。
 したがいまして、この表を見ていただくときにご留意いただきたいのは、同一の方が日本に何度もお見えになっているような場合にはそれぞれ1件というカウントになっておりますので、あくまでも延べ件数であると。正確な頭数、人員でないということでございますので、例えば韓国の場合、政府登録者は2,200 名に対して1,555 名も平成8年度から来ているのかというふうにご理解いただきますと若干の誤解が生じようかと思います。延べ件数ということでございます。
 したがいまして、延べ件数は2,411件でございますが、その件数をご覧いただきますとおわかりいただけますように、日本との在外被爆者の方という意味で行き来の比較的多い国、例えば韓国でありますとかアメリカであるような国と、そうでない国というのは顕著に分かれておるということがおわかりいただけると思いますし、また、同時にその対象となっている国がさきほどご説明をいたしました4地域に限らず、かなり広範に渡っておるということも傾向としてはご理解いただけるのではないかと思います。
 以上、長くなりましたが、資料の説明でございました。

 森座長
 はい。どうもありがとうございました。たいへん長い歴史があるということがわかりましたが、何かご質問なり、あるいはご意見でもございませんでしょうか。よろしゅうございますか。はい。どうぞ、お願いいたします。

 岸委員
 一連の問題の中で朝鮮半島の方の取り扱いが専らこれまでも問題化しているのですが、これだけ広域なところに在外被爆者がいらっしゃるということ、他の地域からの取り扱いについての申し入れ、要望等は出ておりませんのでしょうか。

 青柳総務課長
 相対的な頻度という点で言うと韓国の場合には特に言わば国交ベースと申しますか、国対国という関係でご要望もあり、一定の経緯があってこういうことになっているということはおわかりいただけたと思います。
 それ以外に例えば健診団が例えば渡米をしたというようなときに、我々も被爆者援護法、国内と同じように適用してほしいというようなご要望はこれまでもございましたし、また、この6月1日の大阪地裁の判決を受けて例えば北米方面の方からそういうことができないだろうかというようなことは非公式にも伺っております。

 森座長
 よろしゅうございますか。他にいかがでしょう。そうすると、いわば個人レベルでの問い合わせ的なものも若干はあるわけですね。

 青柳総務課長
 ございます。

 森座長
 よろしゅうございますか。はい。

 土山委員
 私の情報間違いかもしれませんが、例えばブラジルの被爆者団体からの要望というのは日本政府宛には出ておりませんでしょうか。

 青柳総務課長
 失礼しました。外務省を経由して、今、土山先生のおっしゃったご要望があるというふうに承知しております。

 森座長
 よろしゅうございますか。それではこれもさきほどの件同様に、いつ立ち戻っていただいてもいいということで先に進みましょう。議事次第を拝見いたしますと、ただいままでに議題の1、検討会開催の経緯について、2、在外被爆者の現状等について、これらの2つが終わったことになります。次は議題3の今後の議論の進め方について。これについては、事務局から案を示していただけますか。

 青柳総務課長
 今後の議論の進め方につきまして特にご相談をさせていただきたいと思いますのは、ひとつはスケジュールの問題でございます。スケジュールにつきましては本日、第1回の検討会、開いていただいたわけでございますが、だいたい大変不躾なお願いではございますが、年内に言ってみれば結論をいただきたいということで大臣からは下命をされておりますので、概ね月1度ぐらいのペースで9月、10月、11月、12月にそれぞれ開いていただければと思います。
 その際に有識者の方、あるいは在外の被爆者関係者の方々からヒアリングと申しますか、お話を伺いましてご検討の参考にしていただくというようなことも非常に有意義ではないだろうかということも考えておりまして、そういったことが可能であれば9月乃至10月にそういった機会を設けていただいて、それと併せて先生方にフリートーキングをしていただくと。11月に少し論点の整理をして、できる限り、12月にまとめに持っていければいかがかというようなことをスケジュールとして考えております。

 森座長
 はい。どうもありがとうございました。拝見いたしますと、今年12月中にとりまとめたいという、そういうご要望のようであります。これは私ども委員の側から都合がいい、都合が悪いなど、なかなか申し上げにくいことですね。
 ですから、少なくとも努力目標としてはこういうことでよろしいと思います。その間にヒアリングか、とにかくいろいろと関係のある方々からご意見を伺いたいとのことであります。このあたりについて何か、場合によっては日程そのものについてでも結構でございますが、ご質問なり、ご意見はございませんでしょうか。どんなことでもご自由に。
 ご本人の都合などもあると思いますので、たとえお願いしてもそのとおりいくかどうかはわかりませんが、候補者として例えばこういう領域の方がいいのではないかとか、あるいはこういう経験をお持ちの方がいいのではないかとか、そういった類いでもここでおっしゃっていただければ事務局で配慮してくれると思います。いかがでしょうか。はい。どうぞ、お願いいたします。

 小寺委員
 今、座長からご提案について、1点、申し上げたいことは、在外被爆者の問題について、今回、このような検討をなさるということは国際的にも戦後の補償問題についての見直しが行われている昨今で、大変タイムリーなことであると思います。
 この在外被爆者の方々は外国に住んでいらっしゃるとしても、当然のことながら被爆によって受けられた様々な被害は日本国内にいらっしゃる方と同じように救済されるというのが原則なのだろうと思うのでございますけれども、他方で外国という別の国の政府が統治しているところにいらっしゃるというような問題があって、さきほどの資料ですと韓国とは政府間ベースで協力をしあいながら今まで被爆者の援護をなさってきたわけで、この観点から、ぜひ、外国の政府がこの問題に対してどういうようなお考えを持っているのかということを知る機会を持てればと思います。

 森座長
 はい。どうもありがとうございました。事務局の方、とにかくご意見はわかりましたね。他にいかがでしょうか。どんなことでもご遠慮なく。はい。

 土山委員
 在外から来ていただいていろいろなお話を聞くというのは非常に有益だと思うのですが、今、厚生労働省の方でお考えのは、例えばどういう方とか、あるいはどういう団体とかというふうなところを何かお考えになっておっしゃっているのでしょうか。それとも今から人選を考えるという段階なのでしょうか。

 青柳総務課長
 スケジュールなり、そういう運用方法についてはこの検討会で先生方にお話を、ご相談をいただいて、それでご指示をいただいてということでございますので、具体的にどういう方にということは私どもの方からは事前に特にお願いしておりません。

 森座長
 はい。いかがでしょうか。その他にどんなことでもご意見があれば。よろしゅうございますか。
 それでは一応、繰り返しになりますが、日程に関しては努力目標ということで、だいたい年内5回ぐらい、今日を含めて5回程度の会合を経て可能な範囲でおまとめいただきたい。そのうちの何回かはいわゆる有識者を招いて意見を伺いたい。その人選、これも繰り返しになりますが、当然、相手側の都合などもありますので、折々、ご相談はいたしますが、まずは取りあえず、事務局に案を作ってもらいましょう。場合によっては事務局の方にお任せ願いたいと思いますが、よろしゅうございますね。では、そのようにいたしましょう。
 ただ、そのとき、あまり説明ばかりに時間を取られて、委員の方々のご発言なり、ディスカッションの時間が圧縮されることがないように。説明も大事ですが、委員の方々のご意見も十分に伺えるような段取りが望ましいですね。

 青柳総務課長
 私ども、やり方としてちょっと考えておりますのは、予め、ある程度、ご発言の内容を紙にヒアリングされる方々にまとめていただいて、要するにいろいろ説明したい部分はなるべく紙を読んでいただいて、その結論にあたる部分、特に重点となる部分を中心にご説明をいただくような形にすれば時間的にも先生方にご質疑、あるいは意見交換をしていただく時間が取れるのではないかというふうには考えております。

 森座長
 はい。それではこの議題の3、今後の議論の進め方については、大筋においてそのようにいたしましょう。
 今日は厚生労働大臣がここにお見えになるのですか。

 青柳総務課長
 2時20分から30分ぐらいには来るだろうと思いますが。

 森座長
 そうですか。それではお見えになった時点でご挨拶いただくなり、何なりといたしましょう。そこで、一応、議題1、2、3を終わりましたが、その他、敢えてその他と申し上げなくても1、2、3の延長として、ここでの議論を続けてまいりましょう。
 さきほど土山委員のご発言の後で、私が自分勝手に、この検討会と申しますか、委員会にはかなり幅の広い自由が与えられていると理解してよろしいのでしょうねと申し上げました。今でもそのとおり考えておりますが、ただ、かなり幅広い自由とは申すものの、この問題は今までの経過を伺いますとそれなりの歴史なり、道を辿ってきたわけであります。また、さきほどのご発言の中でも、外国とか外交とかといったようなお言葉も何回か出ております。従って、幅の広い自由が与えられていることは事実といたしましても、外交とか、裁判とか、あるいは今までの法律とか、そういうものの基盤の上にたつ、すなわち場合によってはある程度の枠内でしか実現の可能性がないことも、これまた他方、事実であろうかと思います。そのような点について私どもの理解を深める、場合によっては共通の理解を持つという意味で、事務局から多少、説明をしていただくのがいいかと思います。例えば外交問題として一定の限界があるといったことを小寺委員のお言葉、あるいはさきほどからの説明でも感じておりますが、外交問題として一定の限度があるというような点をもうちょっと説明していただけますか。

 青柳総務課長
 在外の被爆者の方への援護策を講じるにあたりましては、さきほど小寺先生の方からもお触れいただいたように対象者が日本の主権の及ばない地域におられるということでありますので、日本国政府が一方的に何か何でもできるということではないだろうと。何かをする場合には、当然、相手国の政府とよく相談をし、場合によっては外交上の交渉をしてやらなければいけないようなものも正直言ってあろうかと思います。
 したがいまして、そのことを外交問題と外交上の制約というのはオーバーな言い方かもしれませんけれども、相手国の政府がどのように考えているか、あるいはどのようにこの問題を理解しているかということについて十分な私どもの理解なりがないと、却って変な形でこの問題が、大げさに申し上げれば国際問題になってしまうのではないだろうかというようなことをちょっと心配しております。
 特に民間ベースでいろいろ交流をする中である程度、自由にできるようなものであったとしても、それを政府が行おうとする場合には相手国の政府の了解なしには行えないというような事例も念頭に置かなければいけないのではないだろうかという意味で、ひとつの留意をしなければいけないというふうに思っております。
 また、これもそう大げさに考えることもないというようなご意見もあろうかと存じますが、さきほどもちょっと経緯の中でご説明させていただきましたが、アメリカとの関係で言えばサンフランシスコ平和条約というような条約がありますし、韓国との関係で言えば日韓請求権協定というような形で、この戦争、あるいはそれに関わる様々な補償の問題について言わば両国間、あるいは関係国間でいろいろと積み重ね、取り決めをしてきたという事実上の経緯ということを我々としては無視をして議論はできないのかなというふうにも思っております。
 戦後処理についてのいずれにいたしましても様々な、今、申し上げたような問題については外交上の経緯も多々ある問題でございますし、現実的に可能な施策を検討するということでお願いをしておるこの検討会において、その従来の取り決めとか、外交上の関係そのものの是非について議論していただくということはちょっとスケジュールの関係、あるいはこの検討会の射程距離という点からは随分と無理なことになってしまうのではないかなというふうにも思うものですから、役人が何を怖がっていると言ってお叱りを受けるかもしれませんけれども、事務局である私どもとしてはそういうことを十分に心配をしながら事務局の仕事をさせていただきたいというふうにご理解をいただければと思います。

 森座長
 わかりました。外交という視点が大事であることは私にも理解できました。しかし、それにしても、対策とか、あるいはその場の弥縫策なり、絆創膏を貼るための相談ではなく、さきほども申し上げましたように、外交なども念頭に置いた上で幅の広い、奥の深い、基本的な議論をしていただきたい。それでよろしいですね。
 いかがでしょうか。こんなことで小寺先生、何かご意見はございませんか。

 小寺委員
 それで結構だろうと思います。
 従来、政府間で法律的に取り決めをしたから問題は終わっているのだという紋切り型の切り口が、結構多く見られたのでございますけれども、昨今はむしろそうではなくて様々な法律的な制約の上で様々な被害を受けられた方が等しい援護を、そして、治療をきちんと受けられる体制をどうやってくみ上げていくのかというような形で議論が、進んでいるように思います。ぜひ、この検討会でも、法律的な問題は法律的な問題として整理した上で、それを越えて、実際にどういうことができるのかという可能性をできるだけ探究するという方向で進めていければと思っております。

 森座長
 はい。ありがとうございました。他に。どうぞご遠慮なく。

 伊藤委員
 被爆者というものは被爆者健康手帳を持っている人に法律上なるわけでございますけれども、いろいろなところに散らばっていらっしゃる。例えば北朝鮮は私たちの得た情報では928 名ですが、果して手帳を何名、お持ちなのか、手帳で被爆者として認定できる方がどれくらいいらっしゃっるか。韓国におきましても2,200 名ということでございますが、実際に手帳をお持ちの方は600 名ぐらいというふうに伺っております。
 北アメリカの方の手帳取得率は60%ぐらいだと思います。在米被爆者の場合には多くは教育のために日本に帰っておられた、いわゆる帰米2世の方が6割を占めていらっしゃるという面もございます。
 一方、南米の方は戦後の移住者ということで手帳取得率も、私もはっきりした数字は覚えておりませんが、80%ぐらいあるのではないかと思います。
 一口に在外被爆者と申しましてもそれぞれすべて状況が違っております。また、一方、日本におきましても未だに手帳が取れない方もいらっしゃるなどいろいろな状況もございますので、そのあたりをどのように平等に考えていくかというのが大変大きな問題だと考えます。一応、問題提起だけをさせていただきます。

 森座長
 ありがとうございました。何をもって平等とするかというのも、これまた別の次元で難しいことではございますね。はい。どうぞ。

 土山委員
 冒頭に訴訟から離れてというお話ございました。確かに論議はそのとおり進めるべきだと思うのですけれども、現実にこの前の大阪地裁の件は上告しておられるのでやはり訴訟の問題は念頭にはなくてはならないだろうと思うのですね。
 私は今までこういうふうな委員会から離れた立場でいつも見ておりましたのですが、近年、医療に関わる訴訟というものは司法の側もだいぶ姿勢が変わってきていると思うのですね。以前に比べますと疑わしきは救済するという方向にシフトしつつあるように感じます。しかも、そのベースにやはり人道的見地とか、あるいは人権擁護というふうな思想があるように思うのです。
 一方、行政の側はしばしばそういった司法の判断に対して上告というふうな形をとるわけですね。ごく最近のハンセン病訴訟は和解されましたけれども、そうしますと上告して結果的に結局、敗訴、あるいは敗訴といく前に非常に情勢不利ということで裁判所側の和解勧告に従うというふうなことで落着することがわりとあると思うのですね。
 ところがそういうのは国民の側から見ていますと、同じ結論に達するにしても何か行政の方は何でこんな引き延ばすのだというふうな不信感めいた空気が非常に強いと思うのですね。これは国民にとっても行政にとっても不幸なことだと思うものですから、私はやはりもちろん行政の側は今までの事例との整合性の問題とか、あるいはいろいろな補償に関する資金の問題とかというのがあるのはわかりますけれども、やはりそういった裁判所側の判断のシフトの仕方なども念頭に置いてなるべく国民の不信を招かない形でこういう問題を、今後、解決していってほしいというふうに、私見ですけれども申し上げておきたいと思います。

 森座長
 はい。ありがとうございました。今、土山委員がおっしゃったことも非常に重要だと思いますが、たまたま裁判とか判決というお言葉が出ました。事務局からのさきほどからのご説明でも最高裁の判断とか、どこの裁判で、などという言葉が出ましたね。この検討会と司法判断の妥当性、などというとちょっと大げさかもしれませんが、そういう点についても事務局はある程度、見解をお持ちでしょうね。

 青柳総務課長
 さきほども資料のご説明の中で、例えば被爆者援護法の基本的性格を反映したものとして参考資料の2につけました孫振斗判決、最高裁の昭和53年の判決のご紹介もさせていただいたところでございますけれども、ご意見の中でおそらく、今後、あるいは今も土山委員も触れられましたが、この最高裁判決の問題、あるいは現在、訴訟中の大阪高裁、あるいは広島高裁で論じられております裁判、こういったものの評価ということに触れられたご意見ということをいただくというケースは当然に生じようかとは思います。
 しかしながら、私ども事務局としては本検討会がそれを直接の目的として議論をしていただくためにご参集いただいたものではないということだけは事務局の基本的な姿勢と申しますか、お願いをする上での姿勢として繰り返し申し上げさせていただいても失礼ではないのかなというふうには思っております。

 森座長
 はい。どうもありがとうございました。そんなことで多少、ご参考になれば。あと、他の委員の方々も。はい。どうぞ、お願いいたします。堀先生。

 堀委員
 その点に関連して質問したい。被爆者の援護は国家補償かどうか、国の責任の在り方がやはり在外被爆者に対する措置を講ずる上でも問題となる、そういう観点からお伺いしたい。孫判決では「戦争遂行主体であった国が自らの責任により」と、わりと国家補償という意味に解しているわけですが、基本懇ではそういう「国の不法行為責任を肯認」したものではないと判断している。そこは意見が違っているのですが、我々、法学者にとっては最高裁が判断したものが、一応、権威があると考えている。
 ただ、これは原爆二法についての判断で、被爆者援護法の前文を読んでみると、「他の戦争被害と異なる特殊の被害である」ということに着目している。孫判決とはやや違った趣旨が前文で書かれている。だから、原爆二法と援護法でその性格が少し変わったのか。そうするとなると孫訴訟の判決というのは今ではあまり参考にならないということになるのかどうかと。そういう点が1点目です。
 2点目は、在外被爆者に対して健康診断などを行ったわけですが、これも一種の医療行為だと思うのです。こういった医療行為をするについて対外的な関係というのはどういふうにして行ったか。その2点をお聞きしたいと思います。

 森座長
 はい。ありがとうございました。ただいま、基本問題懇談会の話が出てきましたね。これもまたさきほどの外交、あるいは裁判ということと並んでひとつの重要な事柄だと思います。今、大臣がお見えになるということですが、どうしましょうか。基本問題懇談会についての説明をしていただきますか。それともここでちょっと大臣をお待ちしますか。どちらがいいですか。

 青柳総務課長
 お許しいただけるのでしたら簡単にご説明申し上げさせていただきます。
 ただいま、堀先生の方から2つ、お訊ねがあったうちの1番目の話でございます。これはさきほどもご紹介させていただきましたように原爆被害に関する措置と戦争を遂行した国の責任の関係については昭和55年の基本問題懇談会においての一定の議論、参考資料の3でございますが、ご紹介させていただいたとおりでございます。
 この基本問題懇談会におきましては、言わば孫振斗最高裁判決で示されたものをどのように被爆者援護法として、当時は原爆二法でございますが理解したらいいかという観点からの議論でございましたので、言わば最高裁判決で使われております言葉はある意味では解説がない言葉でございますので、そのままどのように理解して実際に行政を行っていったらいいかということについて、私ども、どういう趣旨かというようなことを聞くわけにまいりませんので、それで昭和55年の基本懇が行われたものと私は理解をしております。 したがいまして、平成6年の被爆者援護法の際にそれが性格が変わったのかということでございましたが、これは私は基本的に性格は変わっていないと。むしろ基本懇において具体的に整理いただいたことをなるべく前文の中に盛り込むという形で整理をさせていただいたものと理解をしております。
 また、2点目のお訊ねの方につきましては、実は非常にこれ、微妙な問題でございまして、北米、あるいは南米に行って医療行為を行う場合に、これがそれぞれの現地の医療法に抵触するかどうかということは昔から非常に大きな問題になっておりまして、例えば北米の場合には現地の医師会と日本の広島の医師会の方でよくご相談をいただいた上で現地の医療機関の協力をいただき、現地の医療関係者に立ち会っていただく形で何とか違法性の問題を回避するというふうな工夫されていると聞いております。
 また、南米の場合にはそういうような言わばやり方がうまく機能していない部分もあって、基本的には南米は相談を行うために行くということでありまして、表向き医療行為を行うということを標榜してのものではないというふうにも承知をしております。以上でございます。

 森座長
 はい。どうもありがとうございました。一応、これでよろしゅうございますか。何か他にご意見、ご質問があれば頂戴いたしますが。どうぞご遠慮なく。よろしゅうございますか。
 そうすると、おそらく、間もなく大臣がお見えになると思いますから、ある意味で切りのいいところでもありますので、ここでご挨拶をいただきましょう。その後おそらく、30分ぐらいは時間の余裕ができると思いますから、できれば委員の皆様方に一言ずつ、出発にあたってのお言葉を頂戴するのがよかろうかと思いますが。

                 (大臣入室)

 森座長
 では、恐縮でございますが、一言、ご挨拶をお願いいたします。

 坂口大臣
 さっそくでございますが、一言だけご挨拶を申し上げたいと存じます。
 先生方には大変お忙しい、しかも、大変暑い中でございますが、今日はご出席をいただきましてこの会をスタートさせていただきまして心からお礼を申し上げたいと存じます。 最初にあたりまして一言だけお願いやら、今までの経過を少しだけお話をさせていただきたいといふうに存じますが、ご承知のとおり、原子爆弾被爆者の方々に対しましては原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律がございまして、これに基づきましていろいろな施策を実施をしているところでございます。
 しかし、この中には海外に居住されます被爆者の皆さん方のことにつきましては十分な記述がございませんで、先般来、広島地裁、あるいはまた大阪地裁におきます裁判等もあったところでございます。双方2つの地方裁判所の結果が出ましたけれども、ひとつの法律に対しまして全く違った方向からの結論が出たところでございまして、ぜひ、この点を何とかしなければならないというのが私の思いでございました。
 現在まで在外被爆者の方々につきまして、この法律に基づかないいろいろの施策はしてきたところでございますが、法に基づきますところの施策というのは今までなかったわけでございます。この法律ができましたときの経過等もお聞きをいたしましたけれども、そのときにもなかなか十分な在外被爆者の皆さん方に対する議論がなされなかったということもございまして、諸先生方にお願いを申し上げて、ぜひとも、ひとつ、この皆さん方に対する問題をご議論をいただきまして我々にいろいろのご指導をいただければと、そんなふうに思った次第でございます。
 しかも、この在外被爆者の皆さん方も既に年齢を重ねておみえなるものでございますから、先生方には大変ご無理なお願いを申し上げることになるわけでございますが、できれば年度内にひとつの方向性をお出しをいただければ大変ありがたいと、そんなことでお願いを申し上げたところでございます。
 森座長先生には長崎の被爆者の問題につきましてもいろいろとご協力をいただきましてありがとうございました。引き続き、また、お世話になるということでございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。どうぞ、皆さん、よろしくお願い申し上げます。

 森座長
 どうもありがとうございました。今のお言葉で、私ども検討会に与えられている使命のようなものがさらにはっきりしたかと思います。まだ、しばらくここにいらしてくださいますか。はい、ありがとうございます。
 幸いにして30分程度の時間が余っておりますので、さきほど申し上げましたように、できれば各委員の方々から一言ずつ、大臣の前で感想をお述べいただければありがたいというのが私の気持ちでございます。この問題はある意味で、法律とヒューマニティとでも申すのでしょうか、そういう両者の間のバランスめいたものが求められているのかと思います。いかがでございましょうか。指名して恐縮ですが、あいうえお順で伊藤委員から。

 伊藤委員
 それでは、申し述べさせていただきますが、被爆者の問題、さきほど申しましたように被爆者であるというのは被爆者健康手帳を保持しているということになるかと思います。日本以外の国におきましては手帳の取得率が異なっております。北朝鮮が非常に少ないと思いますし、韓国もさっき申し上げましたように2,200 人で約600 人ぐらいということでございます。
 この様な手帳取得率の異なる状況と共に、被爆者健康手帳は、健康診断、医療の給付、さきほどから話題になっております健康管理手当等の手当の支給、福祉サービスなど、総てが含まれております。それらをどのようにしてばらばらに切り離すことができるかというのがひとつ大きな問題になると思います。
 それとともに一方では手帳を持っている方と持っていない方の不公平という問題もございます。よくマスコミ報道では手帳イコール健康管理手当のような報道がなされておりますが、実際はそうではございません。特定の疾病を持っている方に支給されるというものでございますから、そこでまた歯止めがかかってまいりますし、それをどのような形でするのが海外の被爆者に対する公平な状況になるのか。これを十分考えて、個別の問題というよりも全体的なバランスということを考えて検討していかなければならないのではないかと私は思っております。

 森座長
 はい。ありがとうございました。今、取得率という言葉をお使いになりましたが、そんなに差のあるものでございますか。

 伊藤委員
 大変違っております。北朝鮮の方は多分、1960年ぐらいに向こうにお帰りになっておりますので、原爆医療法が施行されましたのが57年でございますから、非常に少ないと思います。韓国は非常に行き来がございますが、それでもこれは私の調べではなくて、支援していらっしゃる方のお話では2,200 人で約600 人ぐらい手帳をお持ちだと。
 すべての方が日本の法律に照らし併せまして被爆者の範疇に入るがどうか、これも私もわかりません。一方、南米は戦後の移住者でございますので非常に取得率が高いという差がございます。

 森座長
 はい。どうもありがとうございました。それでは次に岸委員にお願いしてよろしゅうございますか。

 岸委員
 感想と申しますより、あまり時間もないようですから、この際、ちょっともう少し議論を、大臣の前ですけれども続けさせてもらってよろしゅうございましょうか。
 感想にも関連するかもしれませんけれども、私はこの被爆者援護法の各種手当がいったいそもそもこれは何なのかという議論であろうかと思うのです。
 今、伊藤さんの方からも出ましたけれども、被爆者手帳を所有していることがイコール健康管理手当を貰えることではないということになりますと、一定程度の被害というか、健康被害に対する、それに伴う生活の補助というような意味合いなのでしょうか。
 要するに生活保護といった一連の社会福祉とこの被爆者援護法が想定しているような被害救済というものの関連をもう少し説明していただきたいというふうに考えます。大臣の前で恐縮ですが、そういう実質的な議論をちょっとお願いできますか。

 森座長
 どうぞ、事務局でどなたか。どうぞお願いします。

 青柳総務課長
 一番最初に資料のところでもご説明しましたように、まず、経緯的に申しますと被爆者手帳を発行し、それに対して必要な医療の給付、健康診断を行い医療の給付を行うという原爆医療法が32年に最初に発足したと。
 したがいまして、この原爆被爆者援護行政が、当初、そういった健康ということを保持、あるいは増進ということを主要課題として発足したということは経緯的にもおわかりをいただけるかと思います。
 したがいまして、その後に発足いたしました特別措置法に基づく手当の性格もこういう言わば健康の保持、増進といったようなものをある意味で補完する機能というものが中心に考えられたということは疑いないところではないかと思います。
 なかなか明確に健康管理手当なりをどういう言わば性格の給付として考えるかということは、例えば法律文上、明確になっておらないところがありますので、私どもはそういった経緯論、あるいはこの健康管理手当について私どもが行政的に説明する際には、例えばそういった健康の保持、増進をするために、例えば非常にわかりやすく俗っぽく言えば医療機関に通うための交通費であったり、あるいはそういった医療なり健康増進の効果がより上がるようにするために、多少、滋養のあるものを摂取するための食費があったり、こういったものを念頭に置いているというふうに承知をしておりますので、その理解をしております。

 岸委員
 生活保護を受けていらっしゃる方、生活保護法との要するに整合性というのはどういうふうな実態、支給上、どうなっておりますか。

 青柳総務課長
 一応、生活保護のいわゆる収入認定にはカウントされておるものと、原爆症の特殊性を考慮した収入認定除外のものがあると、承知しております。健康管理手当は、一応、そういう言わば所得保障的なものとは別ということでありまして収入認定はされていないというふうに承知をしております。

 森座長
 どうぞ。まだ、時間はございますからさらにご質問くだされば。大丈夫ですよ。

 岸委員
 健康管理手当だけが収入認定外ですか。

 青柳総務課長
 やや詳細にご説明させていただきます。お手元の資料の4−1、恐縮でございますがお開きいただきたいと思います。
 4−1のところに諸手当の支給ということで1頁目に医療特別手当以下、いくつかのものがございます。この手当の中で収入認定されておりますものは、例えば医療特別手当につきましてはこのうちの一部、139,600 円の一部の36,610円を収入認定から除外して、あとは収入認定の対象にするというようなことでされております。
 特別手当につきましては、全額を収入認定するということでやっております。原爆小頭症手当、あるいは健康管理手当、保健手当等につきましては全額収入認定除外というようなことで運用されているということでございまして、言わばそれぞれの手当の性格、あるは経緯を踏まえた取り扱いというふうに承知をしております。

 森座長
 それは次の頁にもわたっていますか。これはまた、別ですか。。

 青柳総務課長
 今、代表例で1頁で説明したつもりでありますが、2頁目の例えば介護手当に関して言えば、例えば介護手当は全額が収入認定除外になっておりますし、家族介護手当については全額が収入認定されているというようなことでありまして、それぞれの手当毎に扱いが違っているという結論でございます。

 森座長
 はい。ありがとうございました。いかがでございましょう。さらに。

 岸委員
 なかなか性格づけがわかりづらいですね。なぜ、これが認定除外で、これが全額認定なのかというのは、要するに生活稼働力というような視点では、どうもないようですね。健康管理手当が全額認定除外となれば必ずしも生活稼働能力が落ちたことに対する保障というか、そういうような考えでもないのですね。

 森座長
 こういう質問をしてはいけないのかもしれませんが、敢えて誤解を恐れず申せば、どちらかと言うとその都度、その都度、対策的に行われてきた事柄の積み重ねが今日に至ったのでしょうか。こういう見方は、フェアじゃないですか。

 青柳総務課長
 事務局としては大変お答えしにくいお訊ねでございますが、いずれにいたしましてもこれらの諸手当につきましては端的に申し上げていろいろな経緯があって、そのときどきにいろいろなご議論があって今日のような形になっておるものですから、白紙に絵を描くということで考えればもうちょっと整理の仕方は正直言ってあろうと存じますが、私どももなかなか白紙に絵を描くという形で行政の仕事をするわけにもまいりませんので、ややわかりにくい形に今日なっているということをお許しいただきたいと思います。

 岸委員
 くどくてすみません。では、一番、わかりすい葬祭料というのはこれは生活保護とはどう関連しますか。

 青柳総務課長
 お答えします。葬祭料は全額収入認定除外でございます。これは言ってみれば葬祭の実費にあてる趣旨ではないというのがどうもこの葬祭料を作ったときの考え方であるようでありまして、そういったこともひとつの理由として全額収入認定除外になっているというふうに承知をしております。

 岸委員
 生活保護の中にもこの葬祭料的色彩のものはありますよね。おそらく、そういう意味で二重給付があり得るのだという考えなのですね。

 青柳総務課長
 厳密に言えば、葬祭料という名目を使っておりますが、二重給付をするということを言わば念頭に置いたものということではなかったというふうに私は理解しております。

 森座長
 ありがとうございました。それでは次に、小寺委員にお願いしましょうか。

 小寺委員
 私、戦後補償の問題をちょっと勉強しておりましたので、その関係からこの検討会に入れということになったのだと思います。
 さきほどからこの手当の性格が国家補償的な性格をもつことについてご議論がございましたけれども、この国家補償的な性格というのが一般の国家補償とやや異なるという感じがいたします。
 まず、単なる戦争被害であるということになりますと、日本政府が補償しなければいけないのは日本国籍を持っている人だけとなります。その場合には日本国籍を持っている人は外国にいても補償をしてもらうのが理論的には筋なのだろうと思います。他方、一般の国家補償であるとします。例えばこういう例が適当かどうかわかりませんけれども、道路を作るために土地が収用されたというような場合の一般の国家補償の場合ですと、外国人であろうが、日本人であろうが、被害を被った方が国家補償を受けるというのが筋だろうと思います。
 そうなりますと被爆者の方々の手当の場合はこれらとは違う整理がなされていて、極めて特異な国家補償的な性格ということになろうかと思います。原理的に言えばどういう意味での国家補償的性格なのかということをやや詰める必要があろうかなという感じがいたします。
 昨今、戦後補償の問題、第2次大戦の被害の問題が、再度、レビューされているというのは我が国だけでございませんで、アメリカや、それから、イギリス、オランダ等、諸外国においても第2次大戦で様々な戦争被害を受けられた方に対する救済が十分であったかなかったかと、こういう検討がされておりまして、例えばイギリスでは日本で捕虜になった方についてイギリス政府が補償金を積み増しをしたというようなこともごく最近、起こっております。
 そういう場合に考えられておりますのは、実際に受けた被害、戦争被害というものが十分に償われたのかと、こういう観点なのだろうと思います。そういう観点からこの問題を見た場合、日本に住んでいらっしゃろうが、海外にいらっしゃろうが、平等に被害に対する救済を受けられるような仕組み、これを作っていくということがやはり理に適っているのだろうと思います。  ただし、問題は日本にいる方について言えば日本だけで単独の措置をとれるわけですが、外国の場合には外国の主権の下にいらっしゃるわけでありますから、そこで外交的な調整、もしくは国際協力というようなものが必要になってくると言えるのかなと私は思っております。
 そういう意味で一国単位の施策ではなくて、もう少し幅の広い施策の可能性というものが探れればいいのではないかなというのが私の感じでございます。以上でございます。

 森座長  はい。ありがとうございました。戦争被害といえば、ずっと後まで残る精神的ダメージのようなものもあるかもしれませんが、外国の場合、多くはその場で与えられた加害なり、受けた被害でございますね。そういうものに、いわば時効はないのですね。

 小寺委員
 それにつきましても時効的なものが一般には設けられているわけでございますけれども、他方で最近のアメリカのカリフォルニアのように、戦争という国家の犯罪に関わるものについては時効を外すのだと、こういう考え方も他方で出てきております。
 しかしながら、また、アメリカ政府は法律的に言えば第2次大戦の問題は終わった問題なのだから、法律的には蒸し返す必要はない、国際法的な観点から蒸し返すことではないけれども、他の様々な施策によって適切な措置をすべきだというような対応をしていると私は理解しております。

 森座長
 ありがとうございました。それこそ法律の及ばないところをヒューマニティというか、人間的な配慮で補っていこうということですね。おそらく大臣がお考えのことと非常に近いのではないかと思います。
 何かお言葉でもございますか。よろしゅうございますか。はい。それでは土山委員にお願いしましょうか。

 土山委員
 はい。私は専門は病理学でございますが、同時に心理分析に大変関心がございまして、さきほど来からの坂口厚生労働大臣のハンセン病救済にかける大変なご情熱、それは今日のご挨拶ということから分析させていただきますと、可能ならば在外被爆者にもなるべくこういうものを適用したいというお考えからこの検討会を設置されたのであろうと。そうしますとそれは私自身が参加した理念と全く一致するということでございます。
 さきほど来、縷々、私は自分の考えをいろいろな観点から申し述べたつもりでございます。以上です。

 森座長
 はい。どうもありがとうございました。それではどうぞお願いいたします。

 堀委員  海外にいる被爆者であってもやはり原爆による健康障害があるという点では同じであって、日本国内における被爆者と同様な措置が必要であるということはそのとおりだと思います。
 ただ、いくつか考査すべきことがあるのではないか。ひとつは、まだ、この法律の性格がよくわかってませんけれども、やはり健康障害に対する現物給付との関係で現金給付が出るのではないかと考えています。そういう仕組みの下で、主権の及ばない地域に住んでいる人に対して医療の給付と結びついた現金給付をどういった形でやれるのかという点がひとつの問題です。
 二つは、日本の法体系の下で特に海外にいる外国人に対して給付をすることがどうかという点です、社会保険みたいに保険料を払った見返りの給付は当然の権利として海外にいる外国人も受けられるわけですが、この法律は公費負担に基づくものです。そういうものは他の公費負担の制度とのバランスの問題があるかと思います。
 3つめとしては公平性の問題で、日本にいる被爆者と海外にいる被爆者、それはひとつの公平性にかかわる問題です。他方、一般戦災者との関連で、被爆による健康障害と関連せずに海外被爆者に現金給付を行うとすると、公平性の問題が生ずる。また、日本にいる被爆者より以上の給付ということにならないのか。そういったことが今後、議論になる。  特にさきほども言いましたけれども、被爆者援護法の性格との関係で問題が出てきている。法律の性格というものを、今後、検討していく必要があるだろうというふうに思います。

 森座長
 はい。どうもありがとうございました。いろいろな法律がありますが、その運用で随分、実態は変わってくることがございますね。この問題に関する限りは、今までも最大限に幅広く運用されてきたが、それでも及ばないというか、至らないところがあるわけですね。どうぞ。

 坂口大臣
 私は発言する資格、ないのだと思いますが。

 森座長
 いえ、大いにご発言ください。

 坂口大臣
 この法律ができましたとき、私もいろいろ党内で議論したことがございまして、そのときにいわゆる国家補償という言葉はなかなか使えないと。国家補償的云々というような言葉がそれに代わって言われたように思っております。
 国家補償ということではないけれども、しかし、それに準ずるような形でひとつ何か考えていけないかということだったというふうに記憶をいたしておりますが、位置づけ、定義というものがなかなかいろいろなことを考えてやるものですから、なかなかそこも難しい位置づけであったというふうに思っています。
 そういう位置づけなものですから、他のいろいろの法律と比較をいたしまして、他の法律では、手帳を付与するということも、付与されるということはさきほど伊藤委員の方からもお話がございましたが、手帳を持っていればそれは被爆者だと。では、手帳を返したらどうなるのかとか、その辺のところがあまりこの法律には、いわゆる被爆者条件と言いましょうか、明確になっていないということもあろうかと思っています。
 したがいまして、これはこの裁判とは関係のない話でございますが、裁判におきましても、広島の裁判におきましても、大阪の裁判におきましてもそうしたことが非常にいろいろな角度から議論をされているといったように思います。
 その辺のところがこの法律ができまたときにそこまでその他の重大な問題もいろいろあったものですから、議論がそこまで及ばなかったと申しますか、整理をされないままに、今、スタートしてしまったということではないかというふうに思っております。

 森座長
 いろいろとご苦労があったのでしょうね。確か最高裁の判決ですか、見解ですか、その中でも「国家補償」とスパッと言い切ってはいないのでしたね。「国家補償のような性格」と表現して。

 坂口大臣
 国家補償的配慮と。

 森座長
 そうなのですね。確かにそういうところでもいろいろと。それから別の事柄ですが、事務局からのご説明の中で失権という言葉が出てきましたね。あれは永久にアウトではなくて、外国にいる間だけ凍結するというか、だめですよという、そういう意味ですか。

 青柳総務課長
 今の法律上の運用では出た途端に、一応、効力がなくなるということになりまして、また、入国されるときに改めて交付を受けていただくというやり方になっております。

 森座長
 それは改めて交付を受けるのですか。

 青柳総務課長
 はい。そのような扱いを、今、しております。

 森座長
 では、その間だけの凍結ではないのですね。はい。何かどうぞ。ご遠慮なく。

 伊藤委員
 凍結と申しますか、交付を受けると言うと難しそうですけれども、実際にはすぐいただけるということで、審査も何もいらないで、権利はずっと継続しております。
 ですから、随分昔の手帳を持って、私が申し上げるのもおかしいですけれども、それを以前は3年毎に更新しておりました。それをしなくても手帳の権利を失うわけではございません。有効がずっと続いております。

 森座長
 はい。どうもありがとうございました。岸委員など、いろいろと普段からお考えのことも多いと思うのです。せっかくの機会でございますから、どうぞご遠慮なくご発言ください。どうぞ。

 岸委員
 大阪地裁の判決、私は最初に聞いた時の直感は、それはどうして同じ健康被害を受けて認定も受けて、なのに居住地で取り扱いが違うというのは誠に不自然だと直観的に、皆、そう思うのでないでしょうか。だから、大阪地裁の判決は、最初、聞いたときには極めて合理的だと、こう思いますよね。
 それで私はそれでは良かった、良かったではなかなか仕事柄、それでいいのかなと、もう1回、考え直して、では、なぜ、そういうような法律要件がいろいろ構成されているのかということも考えはじめたら、なかなかこれは難しいなと、実はその次に思ったのです。
 つまりこの法律というのはいったいどういうもともと目的を持って制定されたものだったのかと。さきほどおっしゃいましたように国家補償的という表現が随所に出てまいります。だけれども、国家補償とは言っておりません。国家補償というならば、では東京大空襲の被災者の方たちはどうなるのかと。あるいは戦争一般の被害、等しく国民はいろいろな被害を受けたのだけれども、それが償われたかと。ほとんど償われていない。軍人軍属とか特定の国家権力との雇用関係にあった方々に対する一定程度の補償はなされておりますけれども、一般国民にはなされていない。
 そうなるとこの被爆者の方たちに対してのみ一定程度の国家補償的な救済の手を差し延べるという意味合いとは何なのかというようなことをつらつら考えていきますと、なかなかそう単純な話ではないのではないかというふうに思ったわけでして。戦後補償だと言ってしまえば私は事柄は誠に単純だと思うのです。戦後補償にはやはり基本的に、ちょっと小寺先生がいらっしゃるから、それは単純だと言われるかもしれませんが、戦後補償だと言うならそれは少なくとも日本の戦争行為に付随して被害を受けた方、国内外を問わず等しくそれは救済を受けるべきだと思うのですが、そうではなくてあくまで特殊な被害に対して国家補償的な意味合いでやっている給付なのだと言われてくると非常に限定をかけられておる給付なわけでして、そうなってくると一定程度の要件はやはり具備さぜるを得ないだろうと。
 その場合に居住というのがどれほどの意味を持つのかということを私、ちょっとまだ自分なりに解決ついておりません。ここの中で議論していきたいのですが、居住という意味、国内居住という意味が果してこの給付の大きな要件として本当に正当なのか、正当でないのか。私は自分の判断する材料はその1点に尽きると思うのです。
 福祉で言えば、堀先生もいらっしゃいますけれども、福祉で言う居住とは何なのか。あるいは福祉でなくてこれは戦後補償的というような場合、戦後補償的意味という場合の居住要件とはいったい何なのか。その辺をちょっと私は詰めて考えたいというふうに考えております。

 森座長
 ありがとうございました。どうぞ。

 土山委員
 今の岸委員のお言葉の中にあった、いつも出てくる言葉なのですが、東京大空襲で被害にあわれた方と原爆であわれた方とのどこが違うのかという問題なのですが、これはさきほど事務局のご説明にもありましたように、やはり放射線による障害というのが一番の根本的な違いだと思うのですね。
 つまり戦後56年経っても今なお、被爆者、特に近距離被爆者なのですが、がんの発生率は明らかに有意差を持って高いという事実があるわけなのですね。これは例えば一般の空襲にあわれて、もちろんそれがきっかけになってその後、何か体が弱くなるとか、あるいはちょっとした健康障害がそれが酷くなるということは十分あり得ると思うのですけれども、はっきりした放射線障害がベースにあって、なおかついろいろな余病を併発するというところが基本的に違っていると思うのですね。
 ですから、この点を踏まえていただかないと何か被爆者だけが特権を持っているというふうにしばしば誤解を受けると思うのですが、しかも、この放射線障害に対しては根本的な治療の手というのは実際はないわけですね。
 もうひとつは、統計的に、結局、有意差を持って証明する以外、もう年齢層が多くなりますと一般の疾患の中に埋没されてしまって特異性が言えないわけなのですね。ですから、そういった疫学的な方法でもって今なお、被害を受けているということを証明する以外はないという非常に難しい問題がありますけれども、それはしかし、やはり厳然たる事実だと思うのですね。ですから、その点だけは識別して考えていただかないといけないだろうというふうに思っております。

 森座長
 おそらくそこで、私たちの領域で言う集団と個という問題が起こってくると思うのです。統計的に有意差をもって明らかに違うとした場合、では、その確率がどのぐらいかという程度によって、実際にどのぐらいのことをすればいいかという次の議論につながっていくのかもしれませんね。実際問題とすればその辺りのところがまた、なかなか難しい点かもしれません。どうもありがとうございました。はい。どうぞ。

 堀委員
 岸委員がおっしゃった居住地の問題ですが、さきほど説明がありましたように、被爆者に対する医療に関する法律が先にできて、その10何年後かに手当、現金給付の法律ができた。現物給付は基本的には日本国内でしか給付できない。したがって、老人福祉法とか身体障害者福祉法などは、全部、居住地の地方公共団体が現物給付することになっている。外国人に対してもこれらの法律が適用されており、国籍要件はないのですが、これは当然、日本国内で行われることを前提としている。
 多分、被爆者に対する給付は現物給付から出発して、その後に現金給付がついたため、そういうふうな形になっているのではないかと私は推測するのですが、その辺を少し事務局で調べてほしいと思います。手当の性格がまだ少しよくわからないところがあるのですが、そういう現物給付が医療と結びついているものなら、多分、日本国内での医療と結びついた給付だということになる。この法律の性格自体がそういうことになるのかなという感じがします。そこを、クリアしないといけないところだなというふうに思っています。

 森座長
 はい。どうもありがとうございました。さらにお言葉でもございますか。よろしゅうございますか。とにかくこんな形で検討会が発足いたしましたけれども。

 坂口大臣
 ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 森座長
 事務局にとってはやや厳しい検討会になるかもしれませんが、これから進めてまいりましょう。いずれにいたしましても今年中に、あるいは大臣が今年度中とおっしゃってくださって少し気が楽になりましたが、結論を出すように努力いたします。
 事務局から将来のこと、または直近の次の会のことでアナウンスしていただけますか。

 青柳総務課長
 まず、最初に訂正をさせていただきたいと思います。さきほど岸先生からお訊ねいただいた際に、あるいは土山先生からお訊ねいただいた際に韓国以外に正式に在外被爆者の関係の要望があるかないかというところについて、私、ちょっと具体のものをご説明しきれなかったと思いますが、例えば北米などにつきましてもあちらの例えば海外日本人大会での要望書等とかといったようなものが歴代の大臣にご要望という形で送られてきているということはこれまでもございますので、ご要望という形でどういう立場を代表される方かというようなことを、一旦、全部捨象いたしますと、これまでも歴代の大臣宛に、あるいは私ども宛にご要望いただいているということは事実でございますので、その点だけ修正をさせていただきたいと思います。申し訳ありませんでした。

 森座長
 はい。

 事務局  次回の開催でございますけれども、予め委員の先生方にご都合等を伺わせていただいておりまして、9月4日火曜日の17時半から、多少遅くなりますけれども、17時半からということにさせていただきたいと思います。

 森座長
 17時30分。5時半ですね。

 事務局
 5時半でございます。次々回の開催につきましては10月4日木曜日、15時から、午後3時からを予定しております。場所等につきましては、現在、まだ、未定でございますので追って連絡させていただきます。よろしくお願いいたします。
 本日はありがとうございました。事務局からは以上でございます。

 森座長
 はい。

 坂口大臣
 先生、すみません。さきほど今年度中というふうに申しましたけれども、できれば今年中に、ぜひ、ひとつお願い申し上げたいと思います。

 森座長
 わかりました。それで何か、今日ご発言になった内容で気になる点があれば、今、ここで訂正しておいた方がよい、などと事務局が気を使ってくれております。しかし、そんなに固くお考えいただかなくても、議事録の案はいずれ発言者にはちゃんとお回ししてご本人にチェックしていただきますね。

 事務局
 はい。そうでございます。

 森座長
 人間のことですからそんなに100 %完璧などということはあり得ない。いろいろな言葉が使われていると思いますが、私はそんなことはあまりお気になさらないでよいと思います。いずれ議事録の案がお手元に回ってまいりますので、その折に、一応、少なくともご自分のご発言だけはちょっとご覧いただき、直していただければ十分であろうと思いますので。  そうすると、もし他にご発言がなければ今日はこれで終わりにしたいと思いますが、よろしゅうございますか。事務局もよろしいですか。
 それではどうもわざわざお出掛けいただいてありがとうございました。

 坂口大臣
 どうもありがとうございました。よろしくお願いいたします。

 森座長
 では、今日はこれで終わりにいたします。どうもありがとうございました。           
     (閉会・15時00分)

照会先:健康局総務課
担 当:金山
電 話:内線2317