李康寧裁判を支援する会  
韓国の原爆被害者を救援する市民の会長崎支部
長崎県被爆二世教職員の会

2001年6月5日(火)

内閣総理大臣,
小泉純一郎様

要請書

在外被爆者にも被爆者援護法の適用を認めた大阪地裁の判決に従い、国は控訴を断念するよう求めます。


在韓被爆者の郭貴勲さんが、渡日治療中に被爆者援護法に基づき「健康管理手当」を受給したにもかかわらず、韓国に帰国したことを理由に受給を打ち切ったことは違法だとして、国と大阪府にたいして受給資格の確認などを求めた裁判で、大阪地裁は郭貴勲さんの主張を認め健康管理手当の支給を命じる判決を下した。

 判決では、「(国や大阪府の対応は)被爆者援護法の根本的な趣旨目的に反する取り扱いで、憲法違反の恐れもある。」と、国と大阪府を厳しく断罪した。

 このような判決は、半世紀にわたって被爆者援護から差別されて来た在韓被爆者や在朝被爆者、さらには在米被爆者、在ブラジル被爆者など全ての在外被爆者にたいする判決である。国はこの判決を真摯に受け止め、被爆者の差別政策を直ちに改めるべきである。

 長崎地裁においても在韓被爆者・李康寧(イ・カンニョン)が同様の訴訟をおこしている。

 李さんは、1945年長崎の三菱兵器大橋工場に徴用され、宿舎の爆心地から約2、5キロの地点にある本蓮寺で被爆した。

 李康寧さんは、1994年(平成6年)7月に3ヶ月の渡日治療を受け、そのときに健康管理手当を受給するに至った。健康管理手当証書には「平成6年8月より平成9年7月までの支給期間」とある。それにもかかわらず、10月に帰国すると同時に健康管理手当の支給は打ち切られてしまった。李さんは「被爆者が居所を移しただけで、被爆者援護法の適用をうけられないのは、明らかに被爆者差別である。被爆者は等しく援護を受けられなければならない。被爆者に国境も差別もあってはならない。」として、国と長崎市を提訴して現在に至っている。

 今回の大阪地裁の判決は、まさに全在外被爆者の最低限の願いをかなえるものである。苦難の半世紀を経て高齢化している被爆者には限られた時間しか残されていない。国が控訴して争うようなことは、人道的な立場からも許されることではない。この判決が生かされる道はただ一つ、国が控訴を断念し在外被爆者に被爆者援護法を適用する行政処置を取ることである。被爆者が死に絶えるのを待つような罪を犯さないよう切に望みたい。

 先日、ハンセン病元患者の熊本地裁の判決を国は受け入れ控訴を断念した。人道的は配慮を優先した決定は大多数の国民の指示を得たことは記憶に新しい。今回も同様である。高齢化している在外被爆者に援護法を適用することを認め国が控訴を断念する決定をするならば、国民はそれを支持するだろう。

 郭貴勲裁判・李康寧裁判を支援するわたしたちは以上の観点から、以下の要請を行うものである。貴職がこの要請を受け入れることを切望するものである。

1、在外被爆者に被爆者援護法の適用を認めた大阪地裁の判決を真摯に受け止め、控訴を行わないよう求めます。

2、大阪地裁判決を受け入れ、長崎地裁における李康寧さんの訴えを直ちに認め、李康寧さんに健康管理手当を支給する行政処置を行うことを求めます。


在外被爆者を支援する                  
           
李康寧裁判を支援する会               
 代表 岩松繁俊 高実康稔 月川秀文    
韓国の原爆被害者を救援する市民の会長崎支部 
 支部長 平野伸人                
長崎県被爆二世教職員の会             
 会長 平野伸人                  


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