在韓被爆者葬祭料裁判

鄭連分さんと朴源慶さんの葬祭料申請却下処分
取り消し訴訟、慰謝料支払い請求の国賠訴訟


 (2006年3月3日更新)


2月21日(火)13:15〜大阪地裁 
判決出ました。
判決文は少々おまちください。



 昨年9月の在韓被爆者・崔季Kさんの裁判勝利により,手当と葬祭料の申請が韓国からできるようになり,大阪府は,大阪地裁で争われていた「鄭連分さんと朴源慶さんの葬祭料申請却下処分」を取り消しました。
 しかし,お二人の遺族(原告)は,「違法な402号通達が廃止された後も,韓国で死んだ被爆者に葬祭料を支払おうとしなかった日本政府の対応は,在韓被爆者への差別であり,差別によって受けた精神的苦痛は,葬祭料が支給されるようになったからと言って癒されるものではない。なぜ,日本政府は在韓被爆者の権利を奪い続けるのか。日本政府のやり方は許せない」として,慰謝料の支払いを求める国賠訴訟を引きつづき闘ってこられました。

 その国賠訴訟の判決が2月21日に下されます。

 この間,日本政府が在外被爆者を被爆者援護法から排除してきたことは違法であったことが,司法の判断として確定してきましたが,権利を奪われていた間の償いは何も行われていません。国賠訴訟でもぜひ勝利できるように,多くの方々の傍聴支援をお願いいたします。

 当日は1時に806号法廷前にお集まり下さい。
  判決後には報告集会を行います。

〒560-0003 豊中市東豊中町4-21-10
韓国の原爆被害者を救援する市民の会
電話・FAX 06-6854-7308


                       訴              状

                                         2004(平成16)年9月21日

大阪地方裁判所 御中

原告ら訴訟代理人弁護士   永  嶋  靖  久 

当事者の表示     別紙の通り
請求の趣旨 別紙の通り
請求の原因 別紙の通り
証拠方法 追って提出する
添付書類 別紙の通り


葬祭料支給申請却下処分取消等請求事件
訴訟物の価額 金      340万円
貼用印紙額  金    2万2000円


請求の趣旨

1 被告大阪府知事が,2004年7月30日付医対第1147−2号をもってした原告崔○○の2
  004年6月23日付原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律第32条に定める葬祭料支給申
  請に対する却下処分,2004年7月30日付医対第1147−3号をもってした原告金○○の200
  4年6月23日付前同葬祭料支給申請に対する却下処分を,いずれも取り消す。

2 被告大阪府と被告日本国は,原告崔○○と原告金○○に対して,それぞれ連帯して金10万
  円ずつ支払え

3 訴訟費用は被告らの負担とする
  との判決並びに第2項,第3項につき仮執行宣言を求める。

請求の原因

(以下では,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律を「被爆者援護法」,
 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律施行令を「施行令」,
 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律施行規則を「施行規則」,
 被爆者援護法1条に定める原子爆弾が投下された際当時の広島市に在った者等
 で,被爆者健康手帳の交付を受けたものを「被爆者」
 という。)

第1 葬祭料支給の申請とその却下

1 原告崔○○の申請と却下
 (1) 亡朴源慶(パク・ウォンギョン。以下,亡朴と呼ぶ)は,原子爆弾が投下された際当時の広島
  市に在った母の胎児であった者であり,被告大阪府知事より被爆者健康手帳の交付を受けた(被
  爆者健康手帳番号0208272)。
 (2) 亡朴は,2004年2月6日死亡した(甲1号証 死亡診断書,甲2号証除籍謄本)。
  亡朴の死亡の際の居住地は,大韓民国慶尚南道○○
  ○○であり,死亡した場所は同市○○ ○○病院である。
 (3) 亡朴が,最後に日本国内に有した現在地は,大阪府であった。
   亡朴は,死亡の当時,被告大阪府知事から,「疾病の名称 細胞増殖機能障害,認定年
  月日 2003(平成15)年10月1日,手当月額 金3万4030円,支給期間 2003(平成15
  )年2月から終身」として,健康管理手当の支給を受けていた(甲3号証 健康管理手当証書)。
 (4) 日本国で被爆者援護法の規定による被爆者健康手帳の交付を受け同法に基づく手当の支
  給認定を受けた者であって大韓民国内に居住するもの(以下「在韓受給権者」という。)に対して,
  日本国の都道府県知事らが行う手当の支給事務及び都道府県知事等に対して在韓受給権者が
  行う届出・申請に関する事務について,日本国の都道府県知事と大韓赤十字社が2004年4月1
  日委託契約を締結するものとし,具体的な締結事務については,各都道府県知事から委任を受け
  た長崎県知事と大韓赤十字社との間で行うものとされている。
  原告崔○○(チェ・○○。以下,原告崔と呼ぶ)は,亡朴の妻である。
  原告崔は,被告大阪府知事に,大韓赤十字社を介して亡朴の死亡を届出た(大韓赤十字
  社は2004年9月10日に死亡の届出を受けつけ,同日大阪府に送付した。被告大阪府知事がい
  つ死亡の届出を受けたかは明かでない)。被告大阪府知事は,健康管理手当の支給を,2004年
  3月以降打ち切った。(過誤払いを防ぐため,大韓赤十字社は,正式に死亡届が出される以前でも
  ,死亡の事実を知った場合は直ちに各都道府県知事にそれを通知している)。
 (5) 原告崔は,2004年2月8日,亡朴の葬祭を行った(甲4号証 葬祭行事確認証および葬
  祭経費の領収書)。
 (6) 前同年6月23日,原告崔は,被告大阪府知事に対して,被爆者援護法32条に定める葬
  祭料の支給を申請した(甲5号証 葬祭料支給申請書)。
 (7) 被告大阪府知事は,前同年7月30日,原告崔に対して,上記葬祭料の支給申請を却下
  した(医対第1147−2号 甲6号証 葬祭料支給申請の却下について)。

2 原告金○○の申請と却下
 (1) 亡鄭學連(チョン・ハンニョン。以下,亡鄭と呼ぶ)は,原子爆弾が投下された際当時の広島市
  に在った者であり,被告大阪府知事より被爆者健康手帳の交付を受けた(被爆者健康手帳番号
  0208405)。
 (2) 亡鄭は,2004年2月25日死亡した(甲7号証 死亡診断書,甲8号証 戸籍謄本,甲9
  号証 住民登録票)。
   亡鄭の死亡の際の居住地は,大韓民国慶尚南道○○であり,
  死亡した場所も同所である(○○は○○の旧称,亡鄭の住民登録票上の住所は昌原市○
  ○となっているが実際の居住地は○○であった)。
 (3) 亡鄭が,最後に日本国内に有した現在地は,大阪府であった。
   亡鄭は,死亡の当時,被告大阪府知事から,「疾病の名称 運動機能障害,認定年月日 
  2003(平成15)年5月16日,手当月額 金3万4330円,支給期間 2003(平成15)年3
  月から終身」として,健康管理手当の支給を受けていた(甲10号証 健康管理手当証書,2003
  (平成15)年10月1日付けで,支給期間が「2006(平成18)年2月まで」から「終身」に変更さ
  れた。甲10は変更前のものである。変更後の手当証書を紛失した)。
 (4) 原告金○○(キム・○○。以下,原告金と呼ぶ)は,亡鄭の長男である。原告金は,被
  告大阪府知事に,大韓赤十字社を介して亡鄭の死亡を届出た(大韓赤十字社は2004年5月2
  3日に死亡の届出を受けつけ,翌5月24日に大阪府に送付した。被告大阪府知事がいつ死亡の
  届出を受けたかは明かでない)。被告大阪府知事は,健康管理手当の支給を,2004年3月以降
  打ち切った。
 (5) 原告金は,2004年2月27日,亡鄭の葬祭を行った(甲11号証 外来診療費計算書およ
  び葬祭経費の領収書)。
 (6) 前同年6月23日,原告金は,被告大阪府知事に対して,葬祭料の支給を申請した(甲12
  号証 葬祭料支給申請書)。
 (7) 被告大阪府知事は,2004年7月30日,原告金に対して,上記葬祭料の支給申請を却
  下した(医対第1147−3号 甲13号証 葬祭料支給申請の却下について。以下,原告鄭に対
  する却下とあわせて本件却下という)。

第2 本件却下の違法

1 被告大阪府知事はどのような理由で却下したか
 (1) 被告大阪府知事による却下の理由は,「死亡した被爆者の死亡の際における居住地が本府
  でないことから,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律施行令第19条及び原子爆弾被爆
  者に対する援護に関する法律施行規則第71条に定める葬祭料の支給要件に該当しないため,本
  府が葬祭料を支給することはできません」というものであった。
 (2) 上記被告大阪府知事の論理は次のようなものである。
  @ 施行令19条は,「葬祭料は,被爆者の死亡の際における居住地の都道府県知事が支給
    」,施行規則71条は「葬祭料の支給を受けようとする者は・・・・被爆者の死亡の際における居住地
    の都道府県知事に提出」と定めている。
  A 亡朴,亡鄭は,死亡の際に大阪府に居住も現在もしていない。
  B ゆえに,支給要件に該当しない。

2 本件却下はどこが誤っているか
 (1) 原告らは被爆者援護法が定める葬祭料支給の要件を満たしていないか
  @ 被爆者援護法32条は,「都道府県知事は,被爆者が死亡したときは,(政令で定めるとこ
   ろにより)葬祭料を支給する。」と定めている。
  A 亡朴,亡鄭は,死亡の際に「被爆者」であった。
   ア いったん被爆者健康手帳の交付を受け,健康管理手当の支給を受けていた郭貴勲(カク・
   キフン)氏に対して,日本国を出国したことを理由に,同氏が被爆者たる地位を失ったとして,健康
   管理手当の支給を打ち切ったことに関し,本件と同一の被告らに対して,健康管理手当の支給を
   求めて争った事件につき,2002年12月5日大阪高裁は,要旨,以下の通り判決した(平成13
   年(行コ)第58号被爆者援護法上の被爆者たる地位確認等請求控訴事件・平成13年(行コ)第
   103号同附帯控訴事件,原審・大阪地方裁判所平成10年(行ウ)第60号,判例タイムス1111
   号194頁)。
  「(1) 法文上の『被爆者』たる地位について
   被爆者援護法,同施行規則の法文上は,日本に居住又は現在している者のみをその適用対
   象とするとか,日本に居住又は現在することが『被爆者』たる地位の効力存続要件であるとか解すべ
   き直接の根拠はない。
   (2) 解釈上の『被爆者』たる地位について
    控訴人らは,被爆者援護法は,解釈上,日本に居住又は現在する者のみをその適用対象と
   し,日本に居住も現在もしなくなった者については法律上当然に『被爆者』たる地位を喪失すると主
   張するので,このような解釈が同法の法的性格,立法者意思,法律全体の法構造などに照らし,
   合理的なものとして是認できるかどうか以下検討する。 ・・・・
    総合勘案するならば,被爆者援護法の法的性格,立法者意思,法律全体の法構造のいず
   れをみても,その旨の明文規定がないにもかかわらず,いったん適法・有効に『被爆者』たる地位を得
   た者が,日本に居住も現在もしなくなることにより,その適用対象から外れ,当然に『被爆者』たる地
   位を喪失するという解釈を,合理的なものとして是認することはできない。同法に国籍条項を置かな
   かった以上,適用対象となり得る外国人が日常の生活関係において日本に居住も現在もしないこと
   は通常予想される事態である。したがって,その合理的解釈に当たっても,『被爆者はどこにいても被
   爆者』という事実を直視せざるを得ないところである。」
  イ 上記大阪高裁判決は,被告らが上告できなかったため,確定した。
  ウ ゆえに,亡朴,亡鄭が「被爆者」であることは,被告らも否定できない。
 B ゆえに,亡朴,亡鄭は,被爆者援護法の定める支給要件に該当している。
   なお,被爆者援護法32条にいう「政令で定めるところにより」とは,支給手続の定めについて
  は政令に委ねることを意味するのであって,法が予定する支給対象自体を政令で制限することはでき
  ない。
 (2) 支給要件を満たす「被爆者」の死亡について,誰が葬祭料を支給すべきか
  @ 「被爆者」が死亡の際に,都道府県に居住現在していた(日本国内にいた)場合は誰か
   施行令19条は,「葬祭料は,被爆者の死亡の際における居住地の都道府県知事が支給」
  (居住地を有しない時はその現在地とすることは施行令3条),施行規則71条は「葬祭料の支給を
  受けようとする者は・・・・被爆者の死亡の際における居住地の都道府県知事に提出」(居住地を有
  しない時はその現在地とすることは施行規則1条)と定めている。
  従って,「被爆者」が死亡の際に,都道府県に居住あるいは現在していた(日本国内にいた)
  場合には,その居住あるいは現在地の都道府県知事が,葬祭料を支給する。
   例えば,仮に,亡朴,亡鄭が,死亡の際に東京に居住あるいは現在していた場合であれば,
  被告大阪府知事は,「死亡した被爆者の死亡の際における居住地が本府でない」という理由で,
  葬祭料の申請を却下できる。
 A 都道府県に居住も現在もしない(日本国内にいない)場合は誰か
  ア 日本国内に居住も現在もしない「被爆者」の手当の支給者は,最後の居住現在地の都道
  府県知事である(施行令4条は,出国する場合は,「最後の居住現在地の知事」にその旨を届け
  出ると定め,施行規則34条は,国外にある場合の氏名変更届の提出先を「手当を支給する知事
  」と定めている。規定の仕方が異なるが,実際上は「最後の居住現在地の知事」と「手当を支給す
  る知事」は同一のはずである。従って,以下では,両者の意義を含めて「最後の居住現在地の都道
  府県知事」という)。
   上記大阪高裁判決を受けて,規則34条他で氏名変更の届出につき,「居住地(居住地を
  有しない時は,その現在地)の都道府県知事(国内に居住地及び現在地を有しない場合にあって
  は,当該受給権者に対し医療特別手当を支給する都道府県知事。第37条,第39条及び第41
  条において同じ。)」と定め,あるいは諸手当につき国外への居住地変更の届出の規定を設ける(規
  則35条の2他)改正等がなされた(別表参照)。
   これら改正は,「日本において手当の支給認定を受けた手当受給権者が出国した場合及び
  日本において手当の支給申請をした者が出国した後に手当の支給認定を受けた場合であっても,
  当該者に対し手当を支給するという取扱に伴う各種届出等の手続規定の整備を行ったものである」
  。「日本において手当の支給認定を受けた手当受給権者が出国した場合には,当該者が出国する
  前まで手当を受給していた都道府県知事が引き続き手当てを支給することとなる」(甲14号証 平
  成15年3月1日健総発第0301001号各都道府県・広島市・長崎市衛生主管部(局)長あて
  厚生労働省健康局総務課長通知)。
  イ 日本国内に居住も現在もしない「被爆者」が死亡した際の,諸手続はすべて最後の居住現
  在地の都道府県知事が行う。
  「被爆者」が国内に居住地及び現在地を有しない場合,死亡の届出を受け(施行規則41条
  ),手当の支給を打ち切り,手帳の返還を受ける(施行規則8条)のは,全て,最後の居住現在地
  の都道府県知事である。
  ウ 従って,日本国内に居住も現在もしない「被爆者」が死亡した際の,葬祭料を支給する者は
  ,最後の居住現在地の都道府県知事である,と考えることができる。

3 本件却下理由は,葬祭料の支払いを拒否する理由になりえない
 (1) 被告大阪府知事がいう却下理由は,被爆者援護法32条に反している
  @ 亡朴,亡鄭は,死亡の際,いずれの都道府県にも(日本国内に)居住現在していなかった。
  A 「死亡の際に大阪府に居住していない」と言う理由による本件却下を認めるなら,死亡の際
  ,日本国内に居住現在していない「被爆者」には葬祭料が支給されないこととなる。
  B この結論は,被爆者援護法32条の明文に反している。
 (2) 日本国内に居住現在していない「被爆者」に葬祭料を支給しないとする実質的理由もない
  @ 「被爆者」の葬祭を行う者に対し,特に葬祭料が支給されるのは,「これら特別の状態にある
   被爆者の福祉をはかる」(1969年4月24日衆議院社会労働委員会における斎藤昇厚生大臣
   の答弁 甲15号証 議事録)ということころにある。
   「被爆者」が死亡の際に,日本国内に居住も現在もしていないことにより,特に「福祉をはかる」
   必要がなくなるとはとうてい考えられない。
    現に,亡朴らは,被爆者の「福祉を図ることを目的」として,被爆者に支給されるようになった「
   健康管理手当」を,韓国において受給していた(原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律
   (以下,原爆特措法という)第1条は「この法律は,広島市及び長崎市に投下された原子爆弾の被
   爆者であって,原子爆弾の傷害作用の影響を受け,今なお特別の状態にあるものに対し,医療特
   別手当の支給等の措置を講ずることにより,その福祉を図ることを目的とする。」と定めた。葬祭料や
   健康管理手当は,原爆特措法において設けられ,被爆者援護法に引き継がれたものである)
  A 日本国に居住する「被爆者」が日本国外で死亡した場合にも,葬祭料は支給される。従っ
   て,死亡地が日本国外であること(死亡診断医が外国の医師であること)は,葬祭料の支給を否定
   する理由にはならない。

第3 国家賠償請求

1 被告らの違法行為と違法性の認識
 (1) 上記大阪高裁判決は,郭貴勲氏による国家賠償請求に対して,「本件では,大阪府知事に
  よる失権の取扱いの根拠となった当時の厚生省公衆衛生局長通達(以下「402号通達」という。)
  は,被爆者援護法においても有効なものであって,大阪府知事はそれに従ったものである。確かに,
  402号通達が同法の合理的な解釈として是認できない部分があることは否めないが,控訴人らの
  主張する原爆二法及び被爆者援護法の法的性格,立法者意思,法律全体の法構造などを総合
  的に検討すれば,その解釈にも一応の論拠がないわけではなく,行政実務上は,全国的に『日本に
  居住又は現在しない被爆者は失権の取扱いとする』旨の統一的な対応がとられていた。」などという
  理由で,「控訴人らに国家賠償法1条1項の故意または過失を認めることはできない。」とした。
   しかし,上記大阪高裁判決が従前の取扱を違法とし,この判決に被告らが上告せず確定した
  ことにより,被爆者援護法1条の被爆者たる地位は,当該被爆者が日本に居住も現在もしなくなる
  ことにより当然に失われるものではないこと,かついったん被爆者健康手帳の交付を受け,諸手当の
  支給を受けた者が,日本国から出国した場合に,手当の支給を打ち切っていた従前の取扱が違法
  であることは,被告国の機関である厚生労働省にも被告大阪府知事にも明らかとなった。
   そして,402号通達の「日本国の領域を越えて居住地を移した被爆者には同法の適用がない
  ものと解される」という部分は,2003年3月1日に出された「健発第0301002号厚生労働省健
  康局長通知」(甲16号証)をもって削除された。
   従って,葬祭料の支給についても,「被爆者」が死亡の際に,日本国内に居住現在しないこと
  を理由に,葬祭料の支給を否定することができないことは誰の目にも明かとなった。
 (2) 厚生労働省は,「被爆者」が死亡の際に,日本国内に居住現在しないことを理由に,葬祭
  料の支給を否定することができないことを認識しながら,あるいは容易に認識できるにもかかわらず,
  施行令・施行規則を改正する(2003年政令第14号および2003年厚生労働省令第16号の公
  布)に際して,葬祭料の支給につき,「被爆者」が,日本国に居住現在しなかった場合の定めを設け
  なかった。
 (3) 被告大阪府知事は,原告らによる葬祭料の申請に対して,法律の施行に関することであると
  して,厚生労働省に指導を仰ぎ,その指導に従って,申請を却下した。
    厚生労働省は,「被爆者」が死亡の際に,日本国内に居住現在しないことを理由に,葬祭料
  の支給を否定することができないことを認識しながら,あるいは容易に認識できるにもかかわらず,被
  告大阪府知事が申請を違法に却下するよう指導した。
 (4) 被告大阪府知事は,「被爆者」が死亡の際に,日本国内に居住現在しないことを理由に,
  葬祭料の支給を否定することができないことを認識しながら,あるいは容易に認識できるにもかかわら
  ず,厚生労働省の指導に従って,申請を違法に却下した。

2 原告らの損害
  被告らが,違法に葬祭料を支給しなかったことにより原告らが被った精神的苦痛は,少なくとも金
 10万円を下るものではない。

  よって,請求の趣旨のとおりの判決を求めて,本訴を提起する次第である。

添付書類
1 訴訟委任状                     2通



当事者の表示
大韓民国慶尚南道○○
      原告     金     ○     ○
大韓民国慶尚南道○○
      原告     崔     ○     ○
〒573-0027 大阪府枚方市大垣内町2丁目16番12号サクセスビル4階
          枚方法律事務所(送達場所)
電話 072-843-3200 FAX 072-843-3202
      原告ら訴訟代理人弁護士 永   嶋   靖  久
〒100-0013  東京都千代田区霞ヶ関1丁目1番1号   
      被告     日     本     国
        代表者法務大臣      野   沢   太   三
〒540-0008 大阪市中央区大手前2-1-22 大阪府庁
      被告     大     阪     府
        代表者 知 事     齋   藤   房   江
同  所
      被告     大  阪  府  知  事     
        齋   藤   房   江